お手頃価格のマルチエネルギー商品展開
今回明らかにされたのは、ラインナップおよびそれぞれの価格レンジだ。ラインナップは1.2Lガソリンターボ、1.2Lターボハイブリッド、そしてEVの3種類、さらにハイブリッド車にはクラス初の3列シート7人乗りも設定される。
価格はボトムレンジを固めるガソリンターボが1万9400ユーロ〜、ガソリンターボハイブリッドが2万5500ユーロ〜、上位グレードとなるEVが2万7400ユーロ〜となる。円換算すると、およそ330万円から465万円の価格レンジだ。もちろん円安の現状から換算したので、現地の感覚ではもっと割安になる。むしろ車格を考えれば、かなり戦略的な値付けといえるだろう。シトロエンは「市場でもっとも競争力のある価格で入手できる」と謳っている。パワートレーンのスペックは以下のとおりだ。
■1.2Lガソリンターボ
1.2LのPure Tech直3ガソリンターボエンジンは、可変ジオメトリーターボチャージャーを採用して75kW/100bhpの最高出力を発生する。6速MTと組み合わされ、Euro7規格にも準拠する。ラインナップのボトムレンジを担う純内燃機関車であり、2列シート5人乗りがラインナップされる。
■1.2Lガソリンターボハイブリッド
もっとも売れ筋になると思われるのが、ハイブリッドバージョンだ。上述の1.2 PureTechエンジンをベースにハイブリッド専用に大幅に手を加え(およそ40%)、21kW/29bhpのモーターを組み合わせてシステム総出力は100kW/136bhpを発生。これにe-DCT(オートマチックトランスミッション)を組み合わせる。シトロエンは“市街地ではおよそ50%をモーター駆動のみで走行できる”ことを謳う。5人乗りと7人乗りをラインナップして、幅広いユーザーにアピールする。
■EV(車名は「e-C3エアクロス」)
EVの「e-C3エアクロス」は、5人乗り2列シート車のみ。83kW/113bhpのモーターと44kWhのLFP(リン酸鉄リチウム)バッテリーを組み合わせて前輪で駆動する。一充電あたりの航続距離は暫定値で300km以上(承認待ち)、最高速度は145km/hを発生する。充電時間は100kW急速充電器を使用した場合、SOC 20%→80%に必要な時間は26分。また2025年にはバッテリー容量を増やしたロングレンジバージョンも追加され、こちらの航続距離は400kmを超えるとアナウンスされている。
いずれのバージョンも外観の差はほとんどない。あえて言えば、EVには“e”のバッジが控えめに配されているくらいか。また、ホイールサイズは16インチが標準で、17インチはオプションとなる。
インフォテインメントシステムはほぼ全車共通
また“魔法の絨毯” と呼ばれるシトロエン車らしい乗り心地を生む「アドバンスト・コンフォート・サスペンション」が全車に採用されているのもポイント。デュアルショックアブソーバの採用により、2本のアブソーバーが縮み側と伸び側で互いに補うように減衰力を発生させる特許取得済みの構造を採用している。新構造のシートと相まって、舗装路から悪路まで、どこまでも滑かな乗り心地が体験できるという。
インテリアの画像も公開された。居住空間を優先したキャビンはシンプルながら、シトロエンらしい洗練されたデザインでまとめられ、装備も必要にして十分といえる。やや小ぶりな2本スポークステアリング、Android AutoとApple CarPlayを備えた10.25インチのインフォテインメントシステムなど必要なものはすべてそろっている。
さらにアクティブセーフティブレーキ、アクティブレーンキーピングアシスト、ドライバーアラートなどADAS機能も充実しており、車両価格に対する満足度は非常に高そうだ。
気になるのは日本導入のタイミングだが、現在のところ公式発表はないので、少なくとも年内は現行モデルが継続販売されると思われる。とは言え、すでに兄妹車の新型e-C3(EV)は一部でティーザー活動が始まっているので、C3エアクロスも早ければ2025年前半には国内発売される可能性が高い。
ただし、国内仕様はハイブリッドとEVの2本立てになる可能性が大きい。また、昨今の円安傾向が今後どのように推移するかも気になるところだ。欧州のようなインパクトのある価格設定に期待したいのだが、さてどうなるか。