岩谷技研は今夏に開始予定の「気球による宇宙遊覧サービス」のスタートを目前に控え、商業運行で使用する機体と同型の2名乗り与圧キャビンを使用したフリーフライトの有人飛行試験を実施。最大到達高度1万555m(10.555km)の成層圏に到達したことを発表した(実験は2024年6月2日実施)。

特殊バルーンで宇宙への旅を安全かつ低コストで

北海道江別市に本拠を置く株式会社岩谷技研は、2016年4月に設立されたスタートアップ。高高度ガス気球、並びに気密キャビンを設計/開発/製造し、気球による宇宙遊覧フライトの実現を目指す旅客技術開発会社だ。誰もが気軽に宇宙遊覧を行うことを可能にする技術を開発し、新たな技術によって“まだ見ぬ未来”を創り出すことを目指して活動している。

画像: 高度1万555m付近で航路を確認するパイロットの宮嶋香和氏。地上のコントロールルームと連携して安全な宇宙の旅を実現。

高度1万555m付近で航路を確認するパイロットの宮嶋香和氏。地上のコントロールルームと連携して安全な宇宙の旅を実現。

気球による有人宇宙遊覧の開発プロジェクトは2020年7月に発足。翌21年にはT3型と呼ばれる自社開発の気密キャビンを用いた最初の無人打ち上げ試験を敢行。成層圏への到達を確認するとともに回収にも成功した。以後、有人“係留”飛行を経て、有人“自由”飛行に移行。高度を徐々に上げるとともに、遊覧飛行サービスの実現に向けて人体への影響も含めた多角的な安全確認作業を並行して進めてきた。

宇宙遊覧と言えば、すでに海外でサービスが始まっているが、いずれもロケットによるもの。短時間で高度100km以上(いわゆる“宇宙”/ 国際航空連盟による定義)に到達できて無重力状態を体験できるものの、そこにいたるまでに人体にかかる非常に負荷は大きく、(コストも含め)誰もが経験できるものではない。

画像: 生体への安全性も生物実験で確認済み。写真は2022年6月に行われた気密キャビン打上実験時のもので、ハムスターは高度23kmの成層圏から無事に帰還した。

生体への安全性も生物実験で確認済み。写真は2022年6月に行われた気密キャビン打上実験時のもので、ハムスターは高度23kmの成層圏から無事に帰還した。

岩谷技研が提供する宇宙遊覧は、ロケットによるそれとは異なる。最新テクノロジーを活用した特殊な気球を使い、ゆっくりと2時間かけて成層圏まで上昇、2時間かけて降下するスローな文字通りの遊覧飛行だ。ゆっくりと上昇/下降することにより、身体に加わる負荷はほとんどなく、自社開発によるカプセルの内部は地上と同じ気圧と温度が保たれている。年齢を問わず、「青い地球」の姿をたっぷり眺めることができる。

商用運航のキャビンで到達高度1万555mを確認

機体の上昇/下降は、気球内部に満たしたヘリウムガスの放出によってコントロールされる。放出バルブは地上からの遠隔操作および同乗するパイロットにより開閉され、離陸地点から予め定められた着陸地点まで、確実に航行される。

岩谷技研では2022年2月に福島で行った有人による係留飛行試験以降、徐々に高度を上げながら毎月のように道内を中心に飛行試験を重ねてきた。

画像: 宇宙船としては極めて大きな直径150センチのドーム型窓を採用。眼下には宇宙ステーションから見るのと変わらない景色が広がる。

宇宙船としては極めて大きな直径150センチのドーム型窓を採用。眼下には宇宙ステーションから見るのと変わらない景色が広がる。

今回の実験は、今夏に開始予定の商業運航で使用する機体と同型の2名乗り与圧キャビン「T-10-VII型気密キャビン(T-10 EARTHER)」によって行われた。骨格設計や気密構造に数々の特許技術が採用されており、機内の気圧変化は旅客機よりも小さく、飛行時の振動や揺れは新幹線よりも小さい。温度も厳密に管理され、地上と変わらないレベルに保たれている。

上述のとおり運行サービスは今夏より始まる。すでに第一期の搭乗者(計5名)は決定済みだ。2025年以降のフライトに関しても2024年中に応募を開始予定とのことなので、興味のある方は以下のWEBサイトをご覧いただきたい。 https://open-universe-project.jp/

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