新発想で生まれたメーターパネルシステム
「フォルヴィア」はフランスの自動車部品メーカー「フォルシア」が2022年1月に、「ヘラー」の株式を取得したことを機に誕生した世界第7位の自動車部品メーカーグループだ。このグループには2019年4月から、かつての「クラリオン」も傘下に入り、現在は商号を「フォルシアクラリオン・エレクトロニクス」として次世代車技術の開発を行っている。今回はその中から日本初公開となった二つの技術にスポットを当ててみた。
フォルシアの出展でもっとも目を引いたのが、新発想で生まれたメーターパネルシステム「スカイライン・イマーシブ・ディスプレイ」だ。これはフロントガラスとインストゥルメンタル・パネルが接する部分に配置されるピラートゥーピラー・ディスプレイで、メーターパネルとヘッドアップディスプレイの機能を合わせ持つ。これによって、ドライバーの視線移動を可能な限り減らし、より安全な運転体験の実現を目指している。
最大のポイントはディスプレイの表示方法にある。まずディスプレイは3つの表示パネルを組み合わせたものとなっており、それぞれの用途に応じて解像度を変えている。具体的にはドライバー前のディスプレイは高解像度な200ppiのTFTディスプレイとし、主に速度やADASなど重要な安全情報を表示する。一方でそれより重要度が下がるインフォテイメント情報は60ppiのミニLEDディスプレイ上に表示。それほど精密な表示は求められない環境照明や障害物警報などは12ppiのLEDライトタイルを使用するという具合だ。
これは目的に応じた最適な表示を実現することで、より直感的な理解につなげることを可能とし、同時に機能に見合ったディスプレイを組み合わせることでコスト低減を図ることができる。ヘッドアップディスプレイとの機能差について担当者は、「フロントウインドウ下に設置するため、ヘッドアップディスプレイのような厳しい法規制を受けず、コントラストもはるかに高く設定できるので視認性でも優位性がある」と説明した。
また、ユニークだったのが、ドライバーの感情をセンサーで読み取って、その状況をディスプレイ上に表示するというもの。たとえば、ドライバーがイライラしているのか、楽しんでいるのかを表示して、第三者的にドライバーの状態を評価する。つまり、人とシステムがコミュニケートすることで、より安全な運転につなげていくというわけだ。こうした機能が評価され、今年1月に米国ラスベガスで開催された「CES2024」では「イノベーションアワード」を獲得した。
タッチブレーキパッドには活用法が色々あり
ヘラーの出展で注目したのが、ブレーキシステムとの物理的な連結がない、ブレーキバイワイヤ式「タッチブレーキペダルパッド」だ。
ブレーキペダルは今も多くがペダルがロッドを介して、機械的にブレーキシステムにつながっている。それを完全な電子制御によって行うのがタッチブレーキペダルパッドだ。そもそもバイワイヤはステアリングやアクセルなどで採用されてきたが、この展示はブレーキでの制御をタッチ式パッドで実現するというものになる。
説明員によれば、完全な電子制御であるために、自動運転機能やブレーキ機能のカスタマイズが自由に行えるだけでなく、ペダルレイアウトを含めたコックピットデザインの自由度を飛躍的に高められるという。とくに軽量素材が使用でき、さらに部品点数の削減につながるため、電動化による重量増が課題となっている電動車にとってもメリットは大きくなる。
会場では、アクセル・バイワイヤで使われている製品と共にタッチブレーキペダルパッドが展示されていた。アクセルの方はペダルの動きが大きいために、操作することによる操作感の違いはほとんどない。
では、タッチブレーキパッドはどうか。手でタッチペダルを押し込んでみたところ、従来のブレーキペダルのような踏みしろがあるわけではない。感覚としては大きなボタンスイッチに近い。これを足の踏み方を変えることでコントールしていくのだ。つまり、完全な電子制御とすることで、ブレーキ機能のカスタマイズが可能となり、あらゆる走行シーンに対応したブレーキ能力が発揮できるというわけだ。
この技術を使えば、電子制御した際のペダルからの手動入力と、自動運転操作時の切り替えや、相互の介入もしやすくなる。さらに言えば、現在はリンク機構などによって機械的に制御を介入させている福祉車両への展開も容易になっていくだろう。タッチブレーキパッドの登場は、運転する行為そのものに新たなメリットをもたらしてくれそうだ。