新時代のクルマはソフトウェア主導で進化する
結論から言うと答えは「イエス」。近年、自動車に通信機器が搭載されるようになっており、それを利用して、一部のクルマではソフトウェアのアップデートが行われるようになっています。
それが「OTA(Over The Air)」という技術であり、すでにテスラやトヨタなどが実施しています。そういう意味で、クルマがスマートフォンのアプリのようにアップデートを行うことができるのは本当です。ただし、すべてのクルマが行っているのではなく、現在では、ごく一部の車種にとどまっているのが現実です。
また、そうした「OTA」の将来の普及にあわせて「SDV(ソフトウェア・ディファインド・ビークル)」という考えも生まれています。これは「ソフトウェアを進化させることで、ハードウェアはそのままで、性能や価値を高めることのできるクルマ」という考えです。
これまでのクルマは、ハードウェアが主体であり、ソフトウェアはあくまでも裏方的な存在でした。それを「SDV(ソフトウェア・ディファインド・ビークル)」によって、ハードとソフトの力関係を反対にしようというわけです。
ソフトウェアが主導するクルマの未来の姿のひとつが、自動運転のクルマになります。また、移動以外のサービスをクルマが実現しようと考えたときに、必要になるのがソフトウェアです。今あるクルマが、走る/曲がる/止まるの性能だけでなく、さらに進化した存在になるためには、ソフトウェアがカギとなります。
そして世界中の自動車メーカーが「SDV(ソフトウェア・ディファインド・ビークル)」を実現しようと、熱心に開発を進めているというのが現状です。
近頃、自動車業界では「100年に一度の大きな変革期」という言葉を耳にすることができます。それを実現するひとつのカギが、ソフトウェアであることは間違いないでしょう。
●著者プロフィール
鈴木 ケンイチ(すずき けんいち)1966年生まれ。國學院大学経済学部卒業後、雑誌編集者を経て独立。自動車専門誌を中心に一般誌やインターネット媒体などで執筆活動を行う。特にインタビューを得意とし、ユーザーやショップ・スタッフ、開発者などへの取材を数多く経験。モータースポーツは自身が楽しむ“遊び”として、ナンバー付きや耐久など草レースを中心に積極的に参加。