トヨタ紡織は5月22〜24日にパシフィコ横浜で開催された「人とくるまのテクノロジー展 2024」に小型化燃料電池システム(ハイドロジェンパワーシステム)を搭載した「FCアシスト自転車」を参考出品した。今後はシステムのさらなる小型化を進め、自転車だけでなく、あらゆる小型モビリティへの搭載を目指しているという。

燃料電池を使ったモビリティは自動車だけではない

トヨタ紡織はトヨタMIRAIやクラウンFCEVの燃料電池スタック用セパレータ、エアフィルターほかトヨタ燃料電池車のコア技術を開発・生産していることで知られる。

その知見や技術を活かし、早期の量産・商品化を目指して開発が進んでいるのが小型燃料電池システム「ハイドロジェンパワーシステム(製品名)」である。

同社が長年にわたり培ってきた精密プレス技術や樹脂成型技術も織り込み、今回は完成度をさらに高めて自転車に搭載して参考出品された。

ハイドロジェンパワーシステムは、大きく分けて3つのパートから構成されている。「FCスタック(水素と酸素を反応させて電気を取り出す)」、「リチウムイオン電池(瞬間的な入出力を補助)」そして「モーター(駆動アシスト用)」だ。

なかでも手乗りサイズまで小型化することに成功したFCスタックはFCEVなどで見慣れた大型のそれとは異なり、“よくぞここまで!”と驚くほどコンパクト。水素タンクは別体式だが、こちらもペットボトルサイズ。短時間で水素の充填が可能なうえ、低圧(1MPa未満)なので取扱い免許が不要な点でも将来の普及を加速しそうだ。

画像: 燃料電池を使ったモビリティは自動車だけではない
画像: 画像は試作時のもの。今回出展された「FCアシスト自転車(タイトル写真)」ではさらにコンパクトかつスマートにまとめられている(画像:トヨタ紡織HP.)

画像は試作時のもの。今回出展された「FCアシスト自転車(タイトル写真)」ではさらにコンパクトかつスマートにまとめられている(画像:トヨタ紡織HP.)

高度なFCシステムをコンパクトサイズに凝縮

今回参考出品されたFC自転車では、FCによる発電量は一定とされている。常時モーターをアシストしてペダル踏力の軽減を行い、下り坂など負荷がない時には電力はリチウムイオン電池に蓄えられる。そして登坂や漕ぎだし時など瞬間的に高出力が必要な場合は、リチウムイオン電池から電力を補助する仕組みだ。

画像: 「ハイドロジェンパワーシステム」のパワーフロー・イメージ。(画像:トヨタ紡織HP.)

「ハイドロジェンパワーシステム」のパワーフロー・イメージ。(画像:トヨタ紡織HP.)

また、水素タンクは水素を出し続けると冷えて水素を出しづらくなる特性がある一方、FCスタックは発電を続けると熱を持つ性質がある。そこで水素タンクとFCスタックのあいだに水を循環させて互いの特性を生かすコンパクトな「熱マネージメントシステム」が採用されている。

画像: FCタンクと水素ボンベの特性を活用したコンパクトな熱マネージメントシステムを開発。(画像:トヨタ紡織HP.)

FCタンクと水素ボンベの特性を活用したコンパクトな熱マネージメントシステムを開発。(画像:トヨタ紡織HP.)

同社では、シェアリングサービスや配送サービスなどのビジネスユースの電動アシスト自転車への導入をきっかけに、今後は医療現場で使用される電動車イスまで、あらゆる小型モビリティにハイドロジェンパワーシステムを搭載することを目指している。

現在はその実現に向けて、よりいっそうのシステム小型化とスタックの高出力密度化の研究・開発を急いでいるという。

水素が我々の生活に根を下ろすには、法整備や製造方法の確立などで、まだ少々時間がかかりそうではある。だが、こうした身近なモビリティへの活用がきっかけとなって、いつのまにか当たり前の存在になっている時代が来るのかもしれない。

画像: 「人とくるまのテクノロジー展2024 」は5月24日までだが、6月15日までオンラインでの閲覧が可能(人とくるまのテクノロジー展サイトでユーザー登録しログイン

「人とくるまのテクノロジー展2024 」は5月24日までだが、6月15日までオンラインでの閲覧が可能(人とくるまのテクノロジー展サイトでユーザー登録しログイン

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