ライフラインが整っていない地域でも居住可能に
水力や風力など再生可能エネルギーによって発電されたグリーン電力は、以前から注目されて研究開発も続けられているが、「自然」に頼るため安定した発電量・供給量を確保することが難しい。それでも、東京都が2025年から新築住宅への太陽光パネル設置基本義務化の制度を始めることもあって、グリーン電力への関心が高まっている。
一方で日本における発電の主力、消費される電力のおよそ8割は石油や石炭など燃料を使った火力発電によって供給されており、その電力網は繋がっている。環境にやさしい電力を使用していたとしても「オングリッド」であればCO2をはじめとする温室効果ガスを発生させているイメージがつきまとう。
そうした状況が長く続いてきたいま、電力会社による送電網に接続せず、グリーン電力を自家発電して自給自足する「オフグリッド」を取り入れようとする動きもある。発電方法はさまざまあるが、現段階で最も現実的なシステムは一般家庭で導入されることも増えてきた「太陽光パネルで発電して蓄電池や電動車に充電する」、いわゆるV2H(Vehicle to Home)だ。
電気料金をゼロにできること、CO2を発生させないクリーンな環境を作れること、震災や落雷などにより地域が停電しても普段どおりの生活が続けられることなどメリットは多い。ただ、機器のメインテナンスや、日照時間が短く暖房や給湯に大きな電力を必要とする冬季の電力不足など不安材料があることも事実だ。
そこで、住宅・建設事業社5社を傘下に持つプライム ライフ テクノロジーズ社は2024年4月4日、栃木・那須に設置したグランピング施設「Miwatas NASU」でオフグリッドの実証実験を開始すると発表した。宿泊者によるさまざまな生活パターンや、季節ごとのエネルギーデータを計測、電力シミュレーションとの比較分析を行うことで、電気やガス、水道、通信などのインフラ整備が整っていない地域においても居住可能な施設として検証。今後の「居住場所を選ばない暮らし」の提案につなげるとしている。
同社はトヨタ自動車とパナソニック ホールディングスの共同出資により設立された、パナソニックホームズやミサワホームなど5社のホールディングス会社で、今回のグランピング施設にはミサワホームのトレーラーハウス「ミサワユニットモビリティ ムーブコア」や、パナソニックの蓄電池システムが組み合わされ、さらに大容量の駆動用バッテリーを搭載するトヨタのEVも活用できるという。
具体的な構成は、ふたつのムーブコアを連結した居住スペースと、それぞれの屋根に設置された薄膜軽量の太陽光発電システム(1.7kWh)、そして発電した電力はパワーコンディショナー「パワーステーション」を介して蓄電池やEV(V2Hシステム)に蓄電される。こうした電力は「快適に節電」するパナソニック製のエネルギーマネジメントシステム「HEMS」によってコントロールされるという。
また給湯器には省電力なエコキュートを、インターネット通信には衛星通信を採用するなど、宿泊・生活に不自由をさせない住環境を整えられている。
今後の展望として、使用した水をろ過・分別・除菌して再利用するポータブル水循環システムを展開するWOTA社と連携して、実証実験することも検討しているという。
このオフグリッドグランピング施設は栃木県那須郡那須町にある那須ハイランド別荘地展望台の遊休地を利活用することを目的として、LIFULL Financialと藤和那須リゾートによって共同運営される。
ウッドデッキからは、眼下には那須ハイランド周辺の大自然、広大な高原と広い空を見渡せるパノラマを眺望でき、施設内にはプライベートサウナやジャグジー付き露天風呂を併設し、四季折々の非日常時間を堪能できる宿泊施設になっているという。