2024年3月29日、東京都は廃止された上野懸垂線(上野動物園モノレール)の後継となる新たな乗り物の公募審査結果を公表した。選ばれたのは「ジェットコースター」同様に下り勾配では位置エネルギーを利用して走行するユニークな乗り物だ。

モノレールからジェットコースターへ

公開されたイメージを見ると、屋根がついたジェットコースターのような見た目をしており、レールも遊園地でよく見るジェットコースターそっくりだ。

詳しい構造は公表されていないが、「ジェットコースターと同様の構造を利用した脱輪の心配のない高い安全性の乗り物」ということから、レールを車輪で挟み込む脱輪防止構造を採用していると見られる。

また、ジェットコースター同様の構造ということもあり、上り勾配はモーターで駆動するが、下り勾配では条件によってジェットコースターと同じように位置エネルギーを利用して走行する、環境に配慮した省エネシステムとなっている。

画像: 構造的には駆動用モーターがついた「屋根付きジェットコースター」と言える(画像:東京都交通局)

構造的には駆動用モーターがついた「屋根付きジェットコースター」と言える(画像:東京都交通局)

もっとも、あくまでも公共交通機関として整備されるため、テーマパークにあるジェットコースターのように急激な挙動によるスリルを味わうアトラクションにはならないはずだが、乗り心地や速度などがどうなるかは注目だろう。

画像: 車内のイメージ(画像:東京都交通局)

車内のイメージ(画像:東京都交通局)

ちなみに選定の主な理由として、「現況の地形に合わせたルート設定となっており、かつルートに適した車両の形式である点、混雑時の動線やバリアフリー等について十分に配慮されている点、緊急時の応急体制等が確立されている点、既存樹木への影響に配慮されている点」などが挙げられており、先代のモノレールが持っていた「新交通システムの実験線」という側面を引き継ぐ形となった。

今後は2024年度から2026年度にかけて、乗り物・駅舎の設計と建設が行われ、2026年度末の供用開始を予定している。

上野動物園モノレールは日本初のモノレールだった

パンダと並ぶ上野動物園の名物として有名だった上野動物園モノレールは、正式名称を「上野懸垂線」といい、自動車が爆発的に普及した戦後の日本において、都市交通の渋滞緩和を目的とした新しい公共交通であるモノレールの実験線として、上野動物園内に建設されたという背景がある。

画像: 開業当初の初代上野動物園モノレール「H形」(画像:東京都交通局)

開業当初の初代上野動物園モノレール「H形」(画像:東京都交通局)

そのため、実は動物園の遊技施設ではなく、鉄道事業法に基づく交通機関として東京都交通局の運営により営業運転を行っていたのだ。

画像: 最終モデルの「40形」(画像:東京都交通局)

最終モデルの「40形」(画像:東京都交通局)

開業以来長年来園者に愛されてきたが、車両設備等の経年劣化を踏まえて2019年11月1日に運行を休止し、2023年12月27日には正式に廃止されている。

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