21世紀版の超音速旅客機が2029年には商業運航を開始か
ブーム社は現在超音速旅客機「オーバーチュア」を開発中で、その前段階として自社開発の超音速ジェット機「XB-1」を開発している。今回はその「XB-1」が初の試験飛行に成功した。
「XB-1」は、炭素繊維複合材、航空電子技術、デジタル技術で最適化された空気力学、先進の超音速推進システムなど、効率的な超音速飛行を可能にする最先端のテクノロジーを活用しているのが特徴で、同社が開発中の旅客機「オーバーチュア」のための基礎研究実証機として用いられることになっている。
初飛行は、カリフォルニア州モハーヴェにあるのモハーヴェ空港&宇宙港で行われ、ブーム社のチーフテストパイロットであるビル・"ドク"・シューメーカー氏が操縦し、もう一人のテストパイロットが追跡機を操縦して飛行をモニタリングする形で実施された。最終的に高度7,120フィート、最高速238ノット(273マイル)を達成して着陸にも成功した。
今後「XB-1」は、以下の重要な技術と革新性を検証し、製品版である超音速旅客機「オーバチュア」の開発に活かすとしている。
拡張現実ビジョンシステム: 機首に搭載された2台のカメラは、姿勢と飛行経路をデジタル表示し、高解像度のパイロット・ディスプレイに表示される。このシステムにより、可動式機首の重量や複雑さを伴うことなく、空力効率を向上させることができる。
デジタル的に最適化されたエアロダイナミクス: エンジニアたちが、数値流体力学シミュレーションを用いて、XB-1の何千ものデザインを検討した結果、離着陸時の安全で安定した動作と超音速での効率性を両立させる最適な設計を実現した。
炭素繊維複合材: XB-1はほぼすべての箇所が炭素繊維複合材料で構成されており、強度と軽さを兼ね備えた構造で高度な空力設計を実現している。
超音速インテーク: エンジン・インテークは、超音速の空気を亜音速まで減速させ、運動エネルギーを効率的に圧力エネルギーに変換する。
ちなみに、モハーヴェ空港&宇宙港はかつて人類で初めて水平飛行で音速の壁を突破した「X-1」やロケットエンジン搭載により7264km/h(約マッハ6.7)を達成した世界最速の有人飛行機「X15」、さらに有人実用ジェット機として世界最速となる3540km/h(約マッハ3)という記録を持つ「SR-71 ブラックバード」の初飛行が行われた地としても有名だ。今や伝説となっている超音速機の初飛行が行われてきたうってつけの場所なのだ。
「XB-1」と超音速旅客機が切り開く未来
夢の超音速旅客機コンコルドの退役から20年、「XB-1」の初飛行は、民間超音速旅客機が大空へ戻ってくることを象徴しており、超音速旅行の復活への道を切り開くものと言えるだろう。
今後、「XB-1」プログラムでは、拡張現実ビジョンシステム、デジタルで最適化された空気力学、炭素繊維複合材、超音速インテークなどの主要な技術と革新性が検証され、「オーバーチュア」の設計・開発の基礎として活用される。
ちなみに、ブーム社によると、開発中の旅客機「オーバーチュア」は、すでに日本航空、アメリカン航空、ユナイテッド航空から130件の受注と予約注文を獲得しているそうだ。
製品版では、現在のジェット旅客機の約2倍となるマッハ1.7の速度で64〜80人の乗客を乗せて、持続可能な航空燃料(SAF)でも飛行可能なように設計される。
ブーム社は、かつてコンコルドが諦めた、より速く、より手頃な価格で、より便利で、より持続可能なフライトを通じて、世界を劇的にアクセスしやすくする21世紀版超音速旅客機という夢を実現できるのか、今後大きな注目を集めることだろう。