車両性能に加えてメーカー/インポーターの姿勢が重視された新制度
新制度の大きな変更点は、従来の車種ごとの評価に加え、メーカーやインポーターに対して「電動車が持続的に活用できる環境構築」をどこまで実現できているかを求めているところだ。
その概略は経産省が発表した以下の図表をご覧いただきたいが、車種ごと、企業ごとの評価点の合計によって補助額が異なってくる。なかでも「充電インフラ整備」、「整備の体制/質の確保」の2項目が車両性能と同じ配点とされているところに注目したい。
【採点基準と配点】
以前から “輸入車や高級車に高額の補助金を支給するのはおかしい”という声も少なくなかったが、上の図表を見る限り、国内メーカーや国産車ディーラーには有利な配点とは言える。
もっとも、以前から充実した国内販売網を構築している輸入車ディーラーの多くは独自の充電ネットワーク構築に乗り出しているからか、一部を除き減額幅は比較的に軽微な範囲に収まっている。
とは言え、日本上陸からまだ日が浅いヒョンデやBYDには厳しい結果となった。両社の扱うEVは2024年4月1日以降の新規登録から補助金が大幅に減額される。
BYDアット3は最大50万円も減額。充電インフラの整備状況が影響か
3月19日に公表された銘柄ごとの補助金交付額一覧を見ると、多少の増減はあるが概ね令和4年度(及びその補正)と同等もしくは若干の減額に収まっている。
一方、ヒョンデとBYD、なかでもBYDのアット3は昨夏に型式指定車となり晴れて85万円の最大支給を獲得したばかりだったのだが、これが50万円もダウンして35万円に減額されてしまう。同社のドルフィンも65万円から30万円ダウンの35万円だ。
ヒョンデのアイオニック5も前年度はグレードを問わず65万円だったが、4月1日登録からベースグレードは35万円(他グレードは45万円)に下がるなど影響は大きい。コナも前年一律65万円から、アイオニック5と同じくベースグレードは35万円(他グレードは45万円)と大幅に引き下げられている。
一部の欧州ブランド車でも大幅な減額が発生
目立つのは上記2社のEVだが、実は欧州メーカーでも大きく減額されているブランドがある。ジャガーとボルボ、そしてポルシェだ。
ジャガーはI-PACEが対象だが、前年度の52万円から40万円も減額されて12万円に。ボルボもEX30が65万円から45万円に、C40が65万円からベースグレードは35万円(他グレードは45万円)、XC40も同じく65万円からベースグレードが35万円(他グレードは45万円)と減額幅が大きい。ポルシェのタイカンも前年度はグレードにより最大52万円〜42万4000円まで幅があったが、今年度は一律20万円になってしまった。
経産省は現時点(3月19日)で各車の採点結果を公表していない。ゆえに大幅な減点理由はいまひとつはっきりしないが、やはり配点比率が高い充電インフラを国内展開できていないことが影響しているのではないだろうか(ただし、ポルシェは独自の充電ネットワーク網を展開しているので、今回の減額はほかに理由があるのかもしれないが)。また、ベースグレードの減額幅が大きいのは航続距離が概ね短いからだと推測できる。
テスラの一部グレードは上限85万円を確保
対して、テスラは、モデル3のロングレンジグレード(AWDロングレンジ)が上限の85万円になった。テスラは一部を除き店舗を持たず、外部給電機能も日本仕様には設定していないなど条件的には不利なはず。それでも給付金の上限まで認められたのは、独自の急速充電網「スーパーチャージャー」に依るものと思われる。同社の他車種も前年と同条件になっており、充電インフラの整備が大きくものを言っていることが裏付けられる。
国内メーカーで興味深いのはトヨタbZ4Xとスバルのソルテラ。兄弟車であり、EVの基本性能にほとんど差はない。にもかかわらず、bZ4Xは最大給付額である85万円、ソルテラは前年度の85万円から今回は65万円に減額されている。やはり、独自の充電インフラを持っていない影響は大きいと思われる。対してEV黎明期から各ディーラーに急速充電器を設置してきた日産はアリア、リーフともに85万円(アリアNISMOは840万円を超えるため今後減額の可能性はある)、サクラも軽EV最高の55万円だ。
今回の令和5年度補正予算の総額は1291億円であり、令和4年度補正予算および令和5年度当初予算の合計900億円の1.4倍にもなる。今年度の申請数の増加を見込んだ増額だが、公表された算定基準にはまだ不明な点もある。経産省には補助金の給付額だけでなく、採点結果についても早めに公表していただきたいと思う。※各車の補助金上限はこちらで確認。