2024年3月14日(アメリカ現地時間)、イーロン・マスク氏率いるスペースXは3回目となる民間大型宇宙船「スターシップ」の飛行試験を実施した。宇宙空間到達は達成したものの、その後の大気圏突入には失敗したようだ。(タイトル写真は2023年4月打ち上げの初号機)

NASAの有人月面探査プロジェクト「アルテミス計画」と「スターシップ」の関係

「アルテミス計画」とは、アメリカ航空宇宙局(NASA)が計画を進めている有人月面探査プログラムのことで、アメリカ国内の民間宇宙開発企業のほか、ESA(欧州宇宙機関)、CSA(カナダ宇宙庁)、JAXA(宇宙航空研究開発機構)など世界各国のパートナーと共同で実施予定の国際的な宇宙開発プログラムのことを指している。

月面着陸までは、月周回試験飛行と地球帰還を無人(マネキンでデータ収集)で実証する第一弾ミッションの「Artemis I(アルテミス I)」、4人の乗組員が実際に宇宙船に乗り込んで月周回飛行を行った後に地球に帰還する第二弾ミッション「アルテミス II」、2人の宇宙飛行士が月の南極付近に着陸を行い約1週間月面での探査を実施してから帰還する第三弾ミッション「アルテミス III」の3ステップに分け、段階的に行われる予定となっている。

画像: 月面基地のそばに待機する「スターシップ」の予想CG

月面基地のそばに待機する「スターシップ」の予想CG

ちなみに「アルテミス I」は2022年11月に打ち上げられて無事帰還に成功しており、「アルテミス II」は2025年9月以降に実施、「アルテミス III」は2026年9月以降に実施される予定だそうだ。

今回飛行試験が実施された宇宙船「スターシップ」は、スペースXが現在開発中の機体で、実際に有人月面着陸を行う第三弾ミッション「アルテミス III」と月を周回する宇宙ステーションを建設する第四弾ミッション「アルテミス IV」で有人月面着陸船として利用されることが決まっている。

今までの飛行試験で学んだこと

予備知識として抑えておきたいのは、「スターシップ」は厳密には宇宙船部分(ロケットの2段目部分)のことで、1段目のブースター部は「スーパーヘビー」と呼ばれていることと、スペースXの拠点があるテキサス州ボカチカの「スターベース」にある自前の発射施設から打ち上げられているということである。

画像: テキサス州ボカチカにあるスペースXの製造・発射拠点「スターベース」(写真は2023年4月打ち上げの初号機発射時のもの)

テキサス州ボカチカにあるスペースXの製造・発射拠点「スターベース」(写真は2023年4月打ち上げの初号機発射時のもの)

2023年4月に実施された1回目の飛行試験では、1段目ロケット「スーパーヘビー」の発射には成功したもののエンジンが動作不良により次々に停止し、機体のコントロールを失ったことで飛行経路を外れたため最終的に自動飛行停止システム(自爆破壊措置)が作動し爆発している。

また、2023年11月実施の2回目となる飛行試験では、1段目ロケット「スーパーヘビー」と2段目宇宙船「スターシップ」の分離機構の変更(分離前から2段目ロケットを点火して、そのパワーで分離する「ホットステージング」式に変更)や発射台の変更(散水システムの新設等)など、1回目の反省を踏まえて多くの点に改良が実施された。

その甲斐もあってか1段目ロケット「スーパーヘビー」は正常に作動して2段目宇宙船「スターシップ」との分離にも成功したが、1段目ロケット「スーパーヘビー」は再利用のための帰還中に爆発、宇宙船「スターシップ」もロケットエンジン燃焼終了直前に信号が途絶してしまった。

画像: イカのような形状の部分が宇宙船「スターシップ」で、左にあるのが1段目ロケットの「スーパーヘビー」(写真は2023年4月打ち上げの初号機で、2号機以降は1段目と2段目の接合部分がホットステージング対応の格子形状に変更されている)

イカのような形状の部分が宇宙船「スターシップ」で、左にあるのが1段目ロケットの「スーパーヘビー」(写真は2023年4月打ち上げの初号機で、2号機以降は1段目と2段目の接合部分がホットステージング対応の格子形状に変更されている)

もっとも、宇宙空間の定義は高度100kmであり、信号途絶直前時点で高度148kmに到達していたため、宇宙空間への到達自体は実現していたわけだが、機体に何らかの問題が発生し自動飛行停止システムが作動して自爆したものと見られている。

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