北米のEVシフトを強力に後押しする
メジャープレイヤー7社によって運営されるIONNAは、昨年7月の設立発表時点では、2023年末の事業開始を目指していたが、規制当局による認可取得の関係で結果的に1カ月余り遅れてのスタートとなった。今夏より、米国内で独自の充電ステーションを開設し、(すでに各社が独自に設置を進めている急速充電器も含め)少なくとも3万基の高出力急速充電器を配備する。
IONNAが設置する急速充電器は、NACS(North American Charging Standard:いわゆるテスラ規格)と、従来から米国内で利用されてきたCCS(Combined Charging System)のどちらの充電方式にも対応した、いわゆるデュアルガン方式を採用する。
充電器の出力はまだ公式に明らかにされていないが、800VオペレーションのEVが今後増加することを考えると、250kW以上の出力を備えてくることは間違いない。NACSに対応していないメーカーや車種でも、すべてのEV(とPHEV)がアダプターなしで利用ができる。
現在の北米CCS規格の公共急速充電器は、およそ2割弱が故障やメインテナンス不良で使用できないと言われるほど問題が多かった。IONNAのステーションではメインテナンスも行き届き、すべてのEVユーザーの利便性は飛躍的に向上するだろう。
IONNAの充電ステーションには、トイレ、飲食店、雑貨店などが施設内もしくは近隣に併設され、ユーザーには従来の充電ステーションとは異なる利便性と快適性も提供される。また、充電される電力も含め、ここで使用される電力はすべて再生可能エネルギーだ。
さらに7社の自動車メーカーのユーザーならば、スマホなどのデジタルデバイスによるさまざまな機能が与えられ、予約、インテリジェントなルート計画とナビゲーション、決済、透明性の高いエネルギー管理、追加機能など、車内およびアプリ内体験とのシームレスな統合を促進することを謳う。
なかでも決済に関しては、テスラスーパーチャージャーや欧州IONITYが採用する「プラグ&チャージ」が採用される可能性が高く、ユーザーは充電プラグを差し込むだけで決済できるようになるだろう。
7社以外のEVメーカーへも参加呼びかけ
IONNAの最高経営責任者(CE)に就任したのは、「ゼネラル・エレクトリック(GE)」、「Electrify America」や「EV Connect」で辣腕を振るってきたエンジニア出身のセス・カトラー氏。「IONNAを率い、世界的な影響力をもつ7つの自動車メーカーとともに電動モビリティの未来を形作ることができることを光栄に思います。広範で高出力の充電ネットワークを構築するという当社の共通のコミットメントは、EV充電にまつわるさまざまな課題を解決し、EVの普及促進に貢献します」と述べている。
全米で1万8000基を超えるテスラのスーパーチャージャー網に加え、IONNAが設置する新充電ステーション網が加わることで、北米の充電環境は大きく変わる。昨今は足踏み状態にあるといわれる北米のEV市場だが、今後の普及に大きな弾みがつくことになるだろう。
すでにNACS規格の採用を表明している他の自動車メーカーにも参加を呼び掛けていることから、今後ネットワークはさらに拡大する可能性もある。その動向は世界のEV市場に、少なからず影響を与えることは間違いなさそうだ。