モーターとバッテリーを制御するのは得意分野
答えはイエスでもあり、ノーでもあります。製品としてのEVをどれだけの数、発売しているのか? という点でいえば、日本の自動車メーカーは、欧州や中国メーカーに遅れをとっています。EV開発で遅れているかと言えばイエスになります。
日本を代表するトヨタでも国内向けのEV専用モデルは、スバルと共同開発した「bZ4X」とレクサス「RZ」しかありません。10年以上も前から「リーフ」を販売する日産でさえ、その「リーフ」に「アリア」、「サクラ」の3台だけ。ホンダは「Honda e」のみで、しかも2024年1月の生産終了が発表されています。
一方、メルセデス・ベンツやBMW、フォルクスワーゲンは、EV専用ブランドをそれぞれ立ち上げ、複数のEVを発売しています。メルセデス・ベンツは「EQ」、BMWは「BMW i」、そしてフォルクスワーゲンは「ID.」がEV専用ブランドとなります。
しかし、別の角度、「EV開発の技術」と見れば、決して遅れているとは言えません。答えはノーとなります。
EVとは、モーターとバッテリー、そして、それらを管理する制御の技術で成り立っています。そして、それらの技術は、ハイブリッドを長年作り続けている日本のメーカーにとっては得意分野になります。
バッテリーもハイブリッドを通して、10年以上のノウハウを備えているのです。そもそも日産は、世界に先駆けて2010年からEV「リーフ」を生産しています。古くなったバッテリーがどうなるのか? そのバッテリーをどのように活用するのかまでを試行錯誤してきました。昨日今日にモーターを扱い始めたわけではありません。
たとえば、日産の最新EVである「アリア」には、永久磁石を使わない巻き線界磁式同期モーターが採用されています。走行条件にあわせて、ローターの磁界の強さを変化することで、効率を高めています。これは最先端のモーター技術であり、日本の自動車メーカーの技術の高さを証明するものと言えるでしょう。
●著者プロフィール
鈴木 ケンイチ(すずき けんいち)1966年生まれ。國學院大学経済学部卒業後、雑誌編集者を経て独立。自動車専門誌を中心に一般誌やインターネット媒体などで執筆活動を行う。特にインタビューを得意とし、ユーザーやショップ・スタッフ、開発者などへの取材を数多く経験。モータースポーツは自身が楽しむ“遊び”として、ナンバー付きや耐久など草レースを中心に積極的に参加。