ビンファスト(VinFast)は、ベトナム最大の複合企業体であるビングループ(VIC)が2017年に立ち上げたベトナム初の国産自動車メーカーだ。わずか2年で世界最高レベルの国内生産工場を立ち上げ、2022年以降はEV専業メーカーとして7モデルを発表している。(タイトル写真は最新モデルの「VF7」)

創業7年足らずでNASDAC上場、2022年からEV専業メーカーに

日本ではまだあまり知られていないが、すでに欧米では地位を築きつつある新興ブランドがビンファストだ。去る2023年8月15日には米国のNASDAQに上場を果たし、取引初日に株価が255%も上昇、時価総額が約850億ドル(約12兆3700億円)に達したことが話題となった。その後は落ち着いたようだが、それだけ市場の期待は高かったのだ。

会社が立ち上がったのは2017年だが、わずか2年後には生産工程の9割を自動化した世界最先端の工場を立ち上げた。グローバルマーケットを強く意識しており、本国はもちろん、欧州、アジアや豪州での展開を始める。当初は内燃機関モデルもラインアップしていたが、2021年3月からベトナム初となるEV(VFe34)の受注も開始するなど、そのスピード感は世界に類がない。

2022年1月に米ラスベガスで開催されたCESでは、内燃機関搭載車の生産から撤退して完全なEV専業メーカーへシフトする計画を発表。北米市場への本格進出をめざして、同年中に市販開始予定のEVモデル2車種(VF9/VF8)を公開した。この2車は同年初冬に北米での納車もスタートしている。

画像: 高度に自動化されたベトナム本国のハイフォン工場。生産規模は最大30万台/年で現在はEVと電動バイクの生産に集中している。

高度に自動化されたベトナム本国のハイフォン工場。生産規模は最大30万台/年で現在はEVと電動バイクの生産に集中している。

ごく短時間でここまで成長することができたのは、欧米の技術を積極的に導入したことが大きい。BMW、マグナ・シュタイヤー、シーメンス、インテル、マイクロソフト、ボッシュ、ZF、クアルコム、ピニンファリーナ……ビングループの潤沢な資金をバックに積極的に提携を進めている。

また、ビンファスト独自の販売メニューとして、バッテリーのサブスクリプション方式(定額利用サービス)を設定している。もちろん通常のEVのように車両とバッテリーをセットで購入することもできるが、バッテリー代が発生しなければ初期費用を3割近く下げることができる。月々の支払額はガソリン給油1回分相当が謳われており、バッテリーの充電能力が70%以下に下がると新品に交換できる。

北米では現在4車種、先進安全装備も充実したプレミアムモデルも

北米ではすでに発売されているフラッグシップSUV「VF9」とミッドサイズSUV「VF8」に加え、次世代モデルとなる「VF7」「VF6」の受注が近日中に開始される。さらに、近い将来には「VF5(本国名 VF5Plus)」もラインナップに加わることは間違いないとみていいだろう。

●VF9
2021年に開催されたLAオートショーで公開されたコンセプトモデル「VFe36」の市販モデルであり、現時点の3列シートのフラッグシップモデル。「ECO」とパフォーマンス志向の「PLUS」の2グレード構成が基本で、どちらも前後にモーターを搭載するAWDだ。全長5116×全幅2253×全高1697mmの堂々たる体躯は、ピニンファリーナの手掛けたデザイン。123kWhの大容量バッテリーを搭載し、航続距離(EPA)は、531km(ECO)、461km(PLUS)。米国での価格は7万9800ドル(約1171万6000円)〜。

画像: 「VF9」

「VF9」

●VF8
こちらもLA2021で公開されたコンセプトモデル「VFe35」の市販型。全長4750×全幅1933×全高1666mmの2列シートミッドサイズSUVとなり、デザインはやはりピニンファリーナが手掛けている。駆動方式は前後2モーターのAWDで、バッテリー容量は87.7kWh。こちらもECOとPLUSがラインナップされており、航続距離はそれぞれ425km、391kmと発表されている。米国価格は4万6000ドル(約675万4000)〜。

画像: 「VF8」

「VF8」

●VF7
2023年11月に本国で発表された最新モデル。トリノ・デザイン社が手掛けたアグレッシブ&スポーティなデザインで、3サイズは全長4544×全幅1890×全高1636mmと発表されている。北米仕様にはECOとPLUSをラインナップし、バッテリー容量はどちらも75.3kWhながら、前車は201hp、後車は348hpと動力性能に大きく差がつけられているのも特徴だ。航続距離はWLTPモードで前車が450km、後車が431km。先進安全運転支援システムも充実しておりOTAにも対応する。

画像: 「VF7」

「VF7」

●VF6
VF7と同時に本国で初披露されたばかり。全長4240×全幅1821×全高1595mmとVF7をひと回り小さくしたサブコンパクトクラスのSUVだ。バッテリー容量は59.6kWhでECOは174hp、PLUSは201hp。航続距離はWLTPモードで399kmと381kmである。VF7と同じく最新のADASおよびコネクトシステムを搭載する。米国ではまだ受注を開始していないが、もっとも価格競争力の高いクルマになると期待されている。

画像: 「VF6」

「VF6」

●VF5 Plus
2023年春より本国での納車がスタートした全長3965×全幅1720×全高1580mmのコンパクトなSUV。バッテリー容量は37.23kWhと小さめだが、航続距離(NEDC)は300km。CES2022で公開されたが本国で先に発売された。新たな国民車となるべく、価格は300万円強で前述のようにバッテリーをリース契約にすればおよそ256万円で購入可能となる。

画像: 「VF5 Plus」

「VF5 Plus」

当面、北米で販売されるのは以上の5車種となる見込みだが、他にも欧州や東南アジア、豪州では同社初のEVとして2022年に発売された「VFe34」も販売。さらに本国や東南アジアでは2023年6月に発表されたコンパクトSUVの「VF3」も用意。こちらは2024年央から納車をスタートする予定だ。さらにマイクロMINIカーの「VF2」の開発も進んでいる。

とにかくそのスピード感は特筆もの。2025年には米ノースカロライナに建設中の新工場の稼働して、VF7、VF8、VF9の生産を開始、年産15万台を目指す。さらに2026年にはインドネシアやインドでも新工場の稼働を始める予定だ。とくに今後急激なモータリゼーションが進むと予想される東南アジア諸国では、内燃機関車ではなく初めて手に入れるクルマがEVになるとも言われている。日本上陸の噂はまだ聞かないものの、今後の動向は注視しておきたいブランドだ。

This article is a sponsored article by
''.