2023年12月11日、ヒョンデとキアが形状記憶合金技術をもとにスノーチェーンとタイヤが一体となった最新技術を発表した。ホイールとタイヤの内側にある形状記憶合金が、ボタンを押すだけで展開してスノーチェーンとして機能するというユニークな技術だ。登場まで少々時間がかかりそうだが、実現すれば冬用タイヤの常識が変わるかもしれない。(タイトル写真はヒョンデのYoutube公式動画より)

ボタンを押すだけでスノーチェーンが展開し冬用タイヤに

スタッドレスタイヤに履き替えた際に悩ましいのが夏タイヤの置き場所だ。ガレージのスペースに余裕があるならばその一画に保管できるが、機械式立体駐車場ではそうもいかない。そこで、冬場はトランクにタイヤチェーンを載せて走ることになるのだが、とくに雪に不慣れな地域のドライバーはその装着は難儀だし、そもそもチェーンを積載していないクルマも多い。その結果、ひとたび雪が降れば道路上で立ち往生していることも珍しくはない。

ヒョンデとキアが共同開発したスノーチェーン一体型タイヤ技術は、今後研究が進むことでタイヤの世界に変革をもたらす可能性がある。その斬新な技術がもたらすメリットは、以下の3点に集約できそうだ。

■突然雪が降り始めても、ボタンを押すだけでホイールとタイヤ内側にインサートされた形状記憶合金が展開してスノーチェーンとして機能する。
■形状記憶合金のメリットを生かし、雪がなくなれば格納され繰り返しの使用が可能。
■スタッドレスタイヤへの交換作業・スノーチェーンの脱着作業や積載が不要になり、ドライバーの労力を軽減する。

画像: 一見すると普通のタイヤ&ホイールだが、ホイールセンターから放射状に延びる6本の溝に秘密がある。

一見すると普通のタイヤ&ホイールだが、ホイールセンターから放射状に延びる6本の溝に秘密がある。

その外観は、ホイールとタイヤにピザのように一定の間隔で放射状に溝が設けられている。その溝部分に形状記憶合金製のモジュールが挿入された構造だ。

通常走行時には、ホイール内部にある形状記憶合金が「L」の字状に圧縮され、路面には接触しない。ドライバーが機能を作動させると、電流が流れ、形状記憶合金が元のプロファイルに戻る。この素材は「J」字型を形成し、モジュールをタイヤから押し出して路面に接触させ、雪道でのグリップ、安定性、安全性を向上させる。

画像: ボタンを押すだけでスノーチェーンが展開し冬用タイヤに
画像: 通常走行時は形状記憶合金製のモジュールはトレッド内に格納されているので路面と接触しない(写真上)が、スイッチをオンにすると(写真下)モジュールがわずかにせり上る。

通常走行時は形状記憶合金製のモジュールはトレッド内に格納されているので路面と接触しない(写真上)が、スイッチをオンにすると(写真下)モジュールがわずかにせり上る。

タイヤの摩耗が進み、通常の走行モードでモジュールが路面に接触しそうになるとアラートにより、ドライバーにタイヤ交換を促すので、タイヤの適切な交換サイクルも実現できるという。その仕組みを詳しく知りたい方は、ヒョンデがYoutubeの公式サイトで作動原理を公開しているので、そちらでご確認いただきたい。

すでに韓国と米国で特許を申請中、次世代EVに採用か?

今回の発表に際して、ヒョンデの先進シャシー開発チームの責任者であるJoon Mo Park氏は「このイノベーションは、いつの日か現代自動車と起亜自動車に導入されることが期待されていますが、これは、先進技術を顧客に利益をもたらす現実世界のソリューションに変えるという当社のコミットメントを反映しています」と述べている。

奇抜なアイデアだと思われるかも知れないが、近い将来、ヒョンデとキアのクルマに実装すべく開発が進められているようだ。すでに韓国と米国では特許を出願しており、今後さらなる技術開発、耐久性と性能試験、規格審査を経て量産化する計画を立てているという。

タイヤ本体の構造(ベルト、カーカス、トレンド面構造、排水性ほか)、グリップ性能・静粛性、さらに言えばリサイクル性など実用化にはさまざまな課題解決が必須となる。おそらく、すでにその解消に目途がついたからこそ、今回の発表に至ったと思われる。果たして、どんなタイヤが登場するのだろうか。今後の動向に興味津々である。

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