11月10日、令和5年度の補正予算案が閣議決定された。経産省によるCEV補助金(クリーンエネルギー自動車導入促進補助金)は“1291億円”と大幅に増額され、現在実施されている令和4年度補正予算および令和5年度当初予算の合計900億円の1.4倍にもなる。通常国会を経て実施細則は今後検討されるが、海外に倣って打ち切りも心配されたCEV補助金が継続されることになったのは朗報と言える一方、交付の条件はより厳しくなりそうだ。

予算は増額だが交付の条件はさらに厳格化へ

いま実施されている令和4年度補正予算及び令和5年度当初予算(令和5年4月1日以降の登録車が該当)では、補助対象車への交付条件に変更があったのはご存じの方も多いだろう。

(1)「補助上限額の上乗せ要件として、従来の外部給電機能を有することに加えて、EV、PHEVの乗用自動車については省エネ法トップランナー制度の2030年度燃費基準の対象となる車両(型式指定車)であることを追加」

(2)「高額車両(税抜840万円以上)は、算定された補助額に価格係数0.8を乗じる」

(2)については理解しやすいが、少々わかりにくかったのが(1)である。国内の型式認証がないと、外部給電機能を搭載していても交付の上限は65万円に減額されたのだ。たとえば、令和5年1月31日に国内発売されたBYDのアット3(外部給電機能を標準搭載)は、3月31日登録車まで上乗せ分を含め85万円が交付されたが、4月1日以降に初度登録された車両は65万円に減額された。登録時に「輸入自動車特別取扱制度(PHP)」を利用しており、国内の型式認証を取得していなかったからだ。BYDは7月13日に形式指定認定を取得し、同日から再び上乗せ分を含む85万円の交付が受けられるようになったが、PHPを利用する輸入車は意外に多い。

補助金の意義を鑑みれば、税金を使って輸入車や高額車両に国産車同様の補助を行うのはいかがなものか、という意見も少なくない。ゆえに、令和6年4月1日以降の初度登録車に交付される補助金には、そうした声が反映される可能性は高いだろう。輸入EVにはさらなるハードルが設けられる可能性もある。

メーカーのEV普及への取り組み姿勢を補助金額に反映

また、令和6年の上半期には、軽商用EVの発売も相次ぐ。トヨタ、スズキ、ダイハツの各社が年度内に新型軽商用EVをそれぞれ発売、さらに同時期にはホンダも「N-VAN e:」を発売する。現在、唯一の軽商用EVである三菱ミニキャブ ミーブの補助金は41万円〜44万9000円であるが、来春一気に4車種も増えれば採用する事業者もかなりの増加が見込まれる。それに伴い、補助金の申請、交付も急増する。今回の補正予算増額の背景のひとつであることは間違いない。

画像: 左上「トヨタ ピクシスバン」、右上「スズキ エブリィ」、左下「ダイハツ ハイゼットカーゴ」、右下「ホンダ N-VAN:e」。

左上「トヨタ ピクシスバン」、右上「スズキ エブリィ」、左下「ダイハツ ハイゼットカーゴ」、右下「ホンダ N-VAN:e」。

さらに令和6年度からは、ユーザーが安心安全にEV、PHEVを乗り続けるためにEVを販売するメーカーやインポーターの取り組み姿勢も補助金額に反映する方針が打ち出されている。その評価基準として以下の項目などが検討される。

・充電インフラの整備:メーカー/インポーター、そして販売店に設置されている充電施設の規模
・修理/メンテナンス等アフターサービスの充実度
・サイバーセキュリティの確保
・自治体との災害連携協定の締結の有無
・使用済みバッテリーの回収状況
など。令和6年度当初予算の実施細則は令和5年補正予算とともに来春には発表されるが、4月1日以降の初度登録車に対しては、補助金の交付条件は現在よりも厳格化、細分化されるだろう。

つまり、補正予算が大幅に増額されたとは言っても個々の補助金が増える可能性は極めて低い。いまEV/PHEVの購入を検討されているなら、タイミングの見極めが重要になりそうだ。

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