39のSBMCメンバーすべての、利害関係を調整する仕様策定の難しさ
フォーシーパワーは現在SBMCで、ホンダ、ヤマハ、ピアッジオとともにコアメンバーを構成している。設立時からSBMCの動向を注視していた人ならば、コンソーシアムのチャーターメンバーかつコアメンバーの1つだったKTMの名がないことに気付くだろう。確かに2022年までKTMはコアメンバーだったが、現在KTMはコアメンバーを外れてレギュラーメンバー28社のうちの1つになっている。
交換バッテリーの国内コンソーシアムのGachaco(ガチャコ)は、ホンダ、ヤマハ、カワサキ、スズキがホンダ製HMPPe:の仕様を使っている。これら国内4メーカーはSBMCメンバーでもあるため、HMPPe:の仕様をそのままSBMC規格化バッテリーに採用すれば、開発や普及の進み具合から大幅なプロジェクトの前進が可能なのでは? と門外漢は思ってしまうのだが・・・。
2030年にバッテリーの需要は現在の14倍にまで達すると予測されているため、SBMCは環境への影響を最小限に抑えるため材料調達やリサイクルなどの点で、持続可能であることを意識した交換式バッテリー規格を模索している。一方で2輪メーカー各社は、SBMCメンバーとしての活動と並行して、自社製2輪EVにとって理想的なバッテリーの有り様も同時に追求しているわけだ。
去る10月11〜12日、東京で開催されたISO(国際標準化機構)の電動モペッドとモーターサイクルのワーキンググループ(ISO/TC 22/SC 38/WG )の会議にはSBMC代表者が初参加し、交換式バッテリー標準化に向けた6つの主要項目からなるプロジェクト提案を準備することが決まった。そしてバッテリーメーカー、交換ステーションプロバイダ、そしてOEMメーカーによる実証実験は、来年から行われる予定であるとSBMCは発表している。
SBMCに参画するすべて企業および団体の利害関係を調整することができる、規格化交換式バッテリーを作ることはいうまでもなく非常に難しい作業だ。私たちがSBMCの努力の結実と呼べる「完成品」を見ることができるのが、だいぶ先のことになってもそれは仕方がないことだろう。ISOワーキンググループの次の会議は4月16〜17日にイタリアのトリノで開催される予定だが、その後どのような発表がSBMCからあるのか引き続き注視していきたい。
●著者プロフィール
宮﨑健太郎(みやざき けんたろう)1969(昭和44)年東京生まれ。1990年よりエディターおよびライターとして、雑誌など各種メディアで活動中。専門分野は戦前〜1970年代クラシックモーターサイクル、医学ジャーナル、ツーリズム。近年は主にWEBメディアのLawrence(https://lrnc.cc)編集長として、2輪EVなど2050カーボンニュートラル関連の、国内外最新情報を発信している。愛車は1970年型BMW R60/5ほか。