日本市場での成功のために、補助金制度に関するロビー活動は行われるのか?
先述のとおり、ハーレーダビットソンの日本市場での成功のバックグラウンドには、同社の「政治巧者ぶり」がある。GATT(関税及び貿易に関する一般協定)がWTO(世界貿易機関、1995年〜)に発展していった1990年代半ばの時代、ハーレーダビットソンは当時のクリントン政権(1993〜2001年)と協力して、日本、台湾、ブラジル、東南アジア諸国などの貿易障害を特定し、それらを排除することに努めていた。
この時代の、日本市場におけるハーレーダビットソンと米政府の「成果」としては、1996年の免許制度改正による指定教習所での大型二輪免許教習・取得可、そして2005年の高速道路2人乗り可(条件付き)があげられる。これらの法改正は結果的に、多くの日本の企業、ユーザー、関連業界の利益にもなり、人々を喜ばせることとなった。一方でこのエピソードは、いわゆる外圧・・・正しくは"米圧"には常に弱い日本を強く意識させられる、民族派愛国者たちには苦々しくも甘受せざるを得ない出来事のひとつでもあった。
現在日本では環境に優しいとされるEV、PHV、FCV普及促進のため、国や東京都が補助金・助成金の制度を実施している。4輪に関しては2輪より普及が先行していることもあってか輸入EVなどもその対象となっているが、2輪に関しては専ら日本に本拠があるメーカー製の、型式認定取得済みの電動モデルに対象が限定されている。
ライブワイヤー ワン、S2 デル マーのどちらか・・・もしくは両方とも日本市場に投入するかは現時点では定かでないが、日本市場でこれらのモデルが大きな成功を収めるために、補助金・助成金の対象モデルにすることを、ハーレーダビットソンは考えているかもしれない。
もしも・・・すでにCE 04などの2輪EVを日本市場に投入しているBMWと"共闘"するなどして、海外製2輪EV補助金対象化をハーレーダビットソンが成し遂げれば、それは多くの2輪EVを求める日本人ユーザーの大きな利益になるだろう。それは新たな、"米圧"の実績の積み重ねと呼べるものになるのかもしれないが・・・。あくまで上記は憶測に過ぎないが、2024年のライブワイヤー上陸のときにどのような影響を彼らが日本2輪EV市場にもたらすか・・・は、多くの人の関心事になるに違いない。ライブワイヤーの今後の動向に、注視していきたい。
●著者プロフィール
宮﨑健太郎(みやざき けんたろう)1969(昭和44)年東京生まれ。1990年よりエディターおよびライターとして、雑誌など各種メディアで活動中。専門分野は戦前〜1970年代クラシックモーターサイクル、医学ジャーナル、ツーリズム。近年は主にWEBメディアのLawrence(https://lrnc.cc)編集長として、2輪EVなど2050カーボンニュートラル関連の、国内外最新情報を発信している。愛車は1970年型BMW R60/5ほか。