近年では、陸上交通だけでなく海上輸送でも電動化の取り組みが積極的に行われている。今回ご紹介する「あすか」は、2023年6月30日に竣工したばかりの新造船で、国内の輸送を行う内航貨物船と呼ばれるタイプであり、世界初のバイオマス輸送EV船だそうだ。

「環境問題」、「熟練船員不足問題」解決のための "スマートシップ"

環境問題への取り組み

「あすか」は、e5ラボ、三菱造船、Marindowsの共同プロジェクトで誕生した499トンクラスの船で、国内の海上輸送を担う "内航貨物船" というタイプである。2基のモーターを駆動力とし、完全に電気のみで推進するEV船となっており、神戸〜相生間に就航する予定だ。

大容量のバッテリーと発電機を搭載し、入出港および荷役中にはバッテリーから供給される電力で推進するタイプなので自動車でいうと、外部充電が可能な "シリーズハイブリッド" に相当すると言ってもいいかも知れない。既存の同型船と比較してCO2排出量を最大50%削減できるそうだ。

また、三菱造船が開発したEV専用新型船型は既存船比20%以上の効率向上を実現した。さらに、第二世代EVパワートレインの採用により、第一世代EVパワートレイン比でサイズと重量を80%削減し、同時に10%以上の効率向上を達成している。

第二世代EVパワートレインと発電機の最適組合せによって、「あすか」はEV船の課題であった『速力』と『航続距離』の課題を解決し、既存船と同等以上の11.8ノットの速力、2,700マイルの航続距離を実現すると同時に、EVパワートレインのモジュール化によって20%以上のコスト低減を実現した。

画像: 船舶版のシリーズハイブリッドという表現が一番わかりやすいと思われる。

船舶版のシリーズハイブリッドという表現が一番わかりやすいと思われる。

船舶版ナビ 、360°カメラ、ドラレコ等先進装備を搭載

乗組員と陸上スタッフの省力化・省スキル化と安全性・効率性向上を目指し、先進的な船舶自動化支援システムが搭載され、船舶運航の各面、特に事故が多く熟練船員を必要とする出入港作業を自動化・省人化・省スキル化し、さらに遠隔監視を可能にしている。

最も人手が必要となる離着桟作業をこれまでの5名から3名(運航は4名)まで削減可能にし、さらには安全性と効率性の向上を実現している。

画像: 360°確認可能なパノラマビューカメラを搭載している。

360°確認可能なパノラマビューカメラを搭載している。

スマートシップの未来

以上のように、「あすか」は船舶版 "シリーズハイブリッド" であり、先進装備を搭載している点では、現在着々と勧められている自動車の電動化・先進的な安全装備の充実化と同様の流れを辿っているようにみえる。

今後こうした船舶が次々と登場し、エコ・自動化という "スマートシップ" へ進化することで海上物流の革新に繋がり、エコと便利の両立ができる時代が訪れることが期待される。

「あすか」の仕様

船の種類電動推進バイオマス輸送船
主寸法全長71.89m、全幅12.00m、深さ6.91/4.04m、喫水4.01m
総トン数 /裁貨重量496トン/ 1,680トン
航海速力 / 航続距離11.0ノット(時速20.4km)/ 2,700マイル(約5,000km)
積載貨物バイオマス燃料
エミッション性能100%ゼロエミッション可能(港内および出入港操船に限る)
CO2排出量既存船比で最大50%削減
推進方式2軸電気推進(360kW x 2基PMモーター)
搭載バッテリー440kWh リチウムイオン電池
企画・開発/ SI /造船所e5ラボ、Marindows、三菱造船/ IHI原動機/本田重工業

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