すでに海外では市民権を得ている「路上充電」。急速に増加するEV/PHEVに対応するため、路上に設置されるEV用充電器は増え続けている。日本では路上充電器はまだ馴染みがないが、ついに国土交通省が「EV充電器の路上設置に関するガイドライン」を公表(2023年5月)。路上充電器の設置基準が明確になったことで、遅れていると言われる日本のEV普及にも弾みがつく可能性が高まってきた。(タイトル写真は海外における路上充電のイメージ)

海外では市民権を得ている路上充電

海外ではEVが加速度的に普及している一方で、日本ではいまひとつ弾みがついていない。その最大の理由が、充電インフラの整備が遅れていることだ。

各種の調査でもEVに関心がある人は日本でも少なくはないようなのだが、いかんせん充電インフラに不安がつきまとう現状では、実際に購入に踏み切ることができるのは普通充電器を設置できる戸建て住宅所有者がほとんど。ゆえにEVに関心が高いのは、40〜50歳台の戸建て所有男性が多いのだとか。

最近では集合住宅でも普通充電器導入を設置できるように国や自治体が後押ししているが、総会決議を始めクリアしなければならない課題が多く、思うようには進んでいないのが現状だ。

とくに若年層の多くが居住する都市部では集合住宅が多く、EVに乗りたくても駐車場で充電できないという問題は無視できない。

翻ってEVの普及が進んでいる海外では、すでに「路上充電」が市民権を得ている。公道に公共用充電機器を設置して、だれでも利用できるようにした充電インフラだ。

ニュースなどで、路上のパーキングエリアで充電している光景を見たことがある人も多いだろう。欧州、北米、中国などでは、さまざまな事業者が参入してネットワーク化が進んでいる。

残念ながら日本では、まだその段階に到達していない。東京都と横浜市で実証実験を行っているものの、自宅(もしくは目的地)以外での充電は高速道路のPA/SAや商業施設の充電器に頼るしかない。

自治体/事業者が動きやすくなった

それに対して国土交通省がついに腰を上げた。去る5月12日、「電気自動車用充電機器の道路上ガイドライン」を公開したのだ。これにより、路上充電器設置に際して事業者が道路管理者(自治体など)に提出する申請書の審査基準が明確になった。いままで曖昧だった参入障壁が下げれば、充電インフラ整備が加速することは間違いない。

画像: 国交省による「車道の一部を転用し歩行空間と充電機器の設置を行ったイメージ」。

国交省による「車道の一部を転用し歩行空間と充電機器の設置を行ったイメージ」。

公表されたガイドラインには、
1) 安全な構造、設置場所等の考え方
充電スペースの標準的な構造と設置場所、それらにまつわる留意事項など
2) 道路占用許可手続き
占用者の選定、許可の審査基準、施工、維持管理・運用などが、具体的に示されている。たとえば、長時間の駐停車を避けるため充電機器は急速充電器に限られる。歩道と車道が分離された道路で窪んだ駐車枠を設置できること。既存のパーキングメーター枠は利用できるなど、その認可の条件が具体的かつ多岐にわたって解説されている。

曖昧だった路上充電器の設置基準が明確になったことで、自治体、事業者ともに申請にかかる負担は大幅に減って、今後は各地で路上充電器が設置されるようになるだろう。

国は「2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略」において、「EV等の普及促進のため、公共用急速充電器3万基を含む充電インフラを15万基設置し、遅くとも2030年までにガソリン車並みの利便性を実現することを目標にしている」。その実現に向けた切り札のひとつが路上充電器なのだろう。

今後、数年のうちにEVの平均価格は、いまのガソリン車と大差ないレベルまで下がることは確実視されるようになってきた。

さらにはバッテリーの技術革新による航続距離の延伸や充電時間の短縮など、EVを買わない理由はインフラのみ、となる時代がすぐそこまでやって来ている。

路上充電設備が普及することで、将来の「V2G(EVが電源系統と直接電気のやり取りをすること)」も実現に一歩近づく。

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