日本の規制
電動アシスト自転車は、法律上の正式名称で「駆動補助機付自転車」と呼ばれる。駆動補助機という名前のとおり、人力で漕がずとも走行できるフル電動自転車は、電動バイク扱いとなり自転車の枠から外れてしまうことになる。
そして、電動バイクと区別するために、「24km/h」でアシストがなくなること、速度の上昇につれてアシスト比率が減衰することの2つの条件が定められている。ただし、欧米とは異なり、モーターの出力制限に関する規定はない。
海外のアシスト規制
EU域内だと、上限速度は日本+1km/hとなる25km/hで、アシスト比率の上限はない。代わりにモーターの出力は250Wまでとなっている。なお、これとは別枠で免許必須となる代わりに45km/hまでのアシストが認められる別規格も存在する。
米国では州によって規制が異なるが、32km/hまでの州が多い。中国は2019年の法改正で安全基準が厳しくなった代わりに、上限速度が20km/hから25km/hに引き上げられた。また、中国では電動アシストというよりは、フル電動がメインで、バッテリーがなくなったときの緊急移動用にペダルがついている自転車という概念であるため、一種のガラパゴス規格となっている。
地域 | 出力規制 | 上限速度 |
日本 | 規定なし | 24km/h |
EU(EPAC) | 250W | 25km/h |
中国 | 400W | 25km/h |
カナダ | 500W | 32km/h |
アメリカ | 750W | 32km/h |
オーストラリア | 250W | 規定なし |
まとめ
日本と海外では、生活環境が大きく異なるため、単純な比較はできない。ただ、日本の規制は世界の中で間違いなくユニークな部類であることは確かである。特に速度に応じたアシストパワーの減衰は日本独自の規格であるが、海外のようにスポーツ目的ではなく、子供を乗せた女性がメインユーザーであることを考えれば、電動アシストモードから通常の自転車モードへの移行がスムーズな日本の規格の方が安心して利用できる。
一方で、中国ではバイクの代わりとして、排ガスを出さずに快適に利用できる移動手段としての電動自転車として進化し、EUでは街中を疲れることなく移動する手段、北米では日本でいうところの原付の代わりとして位置づけられているということだろう。
このように、世界各国でバラバラの法規制がかけられているが、その背景には各国での生活環境と“電動アシスト自転車”の役割の違いがあると考えられる。日本では、誰でも乗れる快適な自転車としての役割が期待されており、その役割を果たすための基準が海外とは違ったのである。