「V2X」とはクルマと“何か=X”がつながるための通信技術の総称だ。ごく近い未来のクルマはどうなるのか、その可能性を含め表現したものだ。その範囲は通信分野を始め自動運転などの次世代技術に及び、ひいては近未来のライフスタイルがどうなるのかを暗示している。現在は、以下に紹介する4カテゴリーで取り組みが進行している。

車載インフォテインメントは激変する

「V2X」で具体的に実現すると思われることを順番に見ていくことにしよう。

■V2I(Vehicle to Infrastructure)
いわゆる路車間通信。通信機器を搭載したクルマと、路上に設置されたさまざまな機器(路側機)との間で、情報を高速でやり取りすることで安全性・快適性そして利便性を強化する。

たとえば、交差点では信号機と情報をやりとりすることによって、赤信号を検知してブレーキ操作を促したり、赤信号の待ち時間を表示したり、右左折時に歩行者や対向車の有無(後述の「V2V」と連携)を検知したりすることができる。すでに一部の車種や地域で実現している。

■V2N(Vehicle to Network)
車両とさまざまなネットワークをつなげること。完全自動運転を実現するには、従来のように車両側に情報をストックするのではなく、V2IやV2Vで得られたデータも含め、クラウド上からリアルタイムに情報を引き出す超高速大容量通信機能が求められる。

その実現につながる初めの一歩として、車載モデムによる地図情報、道路状況のリアルタイム更新、エンタメコンテンツの受信などさまざまなサービスが実用化され始めている。

■V2P(Vehicle to People)
歩行者(や自転車)が持っているスマートフォンと車載の通信機器のあいだで情報をやり取りすること。クルマの近くにいる歩行者や自転車の位置を把握することが可能になり、たとえば物陰からの飛び出しによる衝突事故などを回避できるなど、交通事故を未然に防ぐ効果が期待されている。

ただし、車両側のセンサーや通信機能だけでは対応できないので、スマホ側にもGPSを始めさまざまなV2P機能を搭載する必要がある。スマホの価格アップや、さらにプライバシーの問題をどう解決するかなどの課題も指摘されている。

■V2V(Vehicle to Vehicle)
自動車同士で通信を行うこと。たとえば、先行する車両から道路状況の情報(事故発生や渋滞情報、違法駐車車両の有無ほか)を受け取ったり、一定の車間を保った隊列走行が可能になる。その結果、渋滞の解消や追突事故の回避など、多くのメリットがもたらされる。

また前述したV2Iとの連携で、交差点で多発する対向車との衝突事故を未然に防ぐことができるようになる。ただし、V2Vはその機能を搭載するクルマが互いに通信することで初めて成立する。現状では標準搭載するクルマはごくわずかであり、しかも上級車にオプション設定されることが多い。普及させるためには大幅なコストダウンと、通信規格の統一が求められる。

最近は「セルラーV2X(Cellular V2X 、C-V2X)」という単語を目にする機会も増えているが、こちらはLTEや5Gなど携帯電話(セルラー)用の通信規格を使ってV2Xを行う際の標準規格およびコネクテッド技術をさす。

既存の狭域通信規格であるDSRC(Dedicated Short Range Communications)よりも通信範囲が広く、5Gを使えばDSRC同等の遅延速度が実現できる。世界各地で実証実験が活発に行われているが、今後は国によって異なる周波数の問題をどのように解決していくかという課題がある。

そしてより課題となるのが、すでにインフラなどで先行するDSRCとセルラーV2Xでは相互の通信が不可能であり、リアルワールドでは共存できないことだ。いずれどちらかの方式に収斂するはずだ。

V2Xの進展は、短期的にはまず車載インフォテインメント機器の激変をもたらすだろう。そして近い将来には、完全な自立走行車を実現する可能性が高い。まだ課題も残るものの、昨今の状況からすると、その変化は想像を超えたスピードでやってくるかもしれない。

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