予算が尽きれば打ち切りなので要注意
EVやPHEVの購入に当たって、補助金は実際にいくら交付されるのだろうか。実はこれは年度ごとに異なる。補助金はあくまで国や自治体の“予算”の範囲内かつ申請によって支給されるものだ。“値引き”的なものとは概念が異なるので注意が必要になる。
また国や自治体ともに、申請の受付は先着順なので、予算の上限に達してしまえばそこで打ち切りとなってしまう。そのため受付期間内だからといって、必ず補助金を受給できるわけではないから注意が必要だ。
では2022年度(令和4年度)に予算化された補助金の交付条件はどうだったか。まずは使用の本拠にかかわらず、全国一律に支給される国の補助金から見てみよう。
これは経済産業省と環境省による補助金で、一般社団法人 次世代自動車振興センターが運営する「クリーンエネルギー自動車導入事業」の予算から拠出される「CEV(クリーンエネルギー自動車)補助金」を指す。
以下にその上限額を紹介するが、車種やグレード、給電機能搭載の有無など細かく規定されており、それぞれ交付額が変わってくる。補助金なので申請が必要になり、令和4年度の受付期間は令和4年4月28日から令和5年3月1日だったので、すでに受付は終了しているが参考までに記しておこう。
[令和4年度CEV補助金]
EVの上限額=85万円(給電機能がない場合は65万円)
軽EV/PHEVの上限額=55万円(同45万円)
FCVの上限額=230万円(同230万円)
さらに交付の条件としては「一定期間内に新車を購入すること」、「購入したクルマは一定期間保有すること(原則4年間)」が定められている。
また令和4年度予算には「高度な安全運転支援技術の上乗せ支援」として最大10万円の上乗せ制度が追加された。上乗せの対象となるのは「1.高精度な位置特定技術」「2.OTA(オーバー・ジ・エア)によるソフトウエアのアップデート機能」、「3.路車間・車車間通信機能」を搭載する車両だ。
1と2を搭載していれば7万円、3も搭載していれば10万円の上乗せ助成が可能だったが、上記3つの条件を満たす車両はなく、1と2を満たした日産リーフの一部グレードのみが対象となった(プラス7万円補助)。
自治体により千差万別というのが実態
一方、自治体ではそれぞれ交付条件や金額が異なる。また、すべての自治体が交付しているわけではないということも知っておきたい。
自治体の補助金には都道府県が交付するものと市区町村が独自に条件を定めて交付するものの二種類が存在する。この2種類をうまく組み合わせることで補助金のメリットを最大限に発揮することができるが、充電設備や太陽光パネル設置などとの組み合わせで助成を行うところある。
そこで本稿では主だった都道府県、もしくはその市区町村が交付する個人ユーザー向け「車両本体の購入」かつ個人向けの補助金に限定して紹介する(※一般社団法人次世代自動車振興センターの「全国の地方自治体の補助制度・融資制度・税制特例措置」より抜粋。数字はすべて令和4年度のもの)。
<北海道:各市区町村にて実施>
例:札幌市 EV=上限30万円、FCV=上限50万円
<岩手県:各市区町村にて実施>
例:軽米町 EV=上限10万円
<宮城県:各市区町村にて実施>
例:栗原市 EV/PHV/FCV=10万円
<福島県>
EV/PHV/FCV=上限20万円
<茨城県:各市区町村にて実施>
例:つくば市 EV/PHV/FCV=10万円
<栃木県>
FCV=上限100万円
※EV/PHVは各市区町村にて実施
例:宇都宮市)EV=上限20万円(給電性能を備えたEV)
<群馬県:各市区町村にて実施>
例:渋川市 EV/PHV=一律5万円
<埼玉県>
EV(普通自動車)=上限40万円
EV(小型・軽自動車)=上限27.5万円
PHV=上限27.5万円
<千葉県:各市区町村にて実施>
例:松戸市 EV=上限3万円、FCV=上限5万円
<東京都>
EV、PHV=上限45万円
FCV=上限110万円
<神奈川県>
EV、PHV=上限20万円(外部給電機能有)
FCV=上限50万円
<新潟県:各市区町村にて実施>
例:柏崎市 EV=上限23万円、PHV=上限5.5万円
<富山県>
FCV=定額50万円
<石川県>
EV/PHV=定額10万円
FCV=定額50万円
<福井県>
FCV=上限100万円
※EV/PHVは各市区町村にて実施
例:高浜町 EV=上限20万円
<山梨県:各市区町村にて実施>
例:韮崎市)EV=一律10万円、PHV=一律5万円
<長野県:各市区町村にて実施>
例:佐久市 EV=上限20万円
<岐阜県:各市区町村にて実施>
例:中津川市 EV、PHV=一律10万円(再エネ電力使用に限る)、FCV=一律10万円
<静岡県:各市区町村にて実施>
例:浜松市 EV=一律5万円
<愛知県:各市区町村にて実施>
例:名古屋市 EV、FCV=20万円、PHV=10万円 ※すべて外部給電機能有車
<滋賀県>
EV、PHV=10万円
FCV=20万円
<京都府:各市区町村にて実施>
例:長岡京市 EV、PHV、FCV=定額10万円
<大阪府:各市区町村にて実施>
例:堺市 EV=一律5万円、FCV=一律20万円
<兵庫県:各市区町村にて実施>
例:姫路市 EV=定額20万円、FCV=定額50万円
<島根県:各市区町村にて実施>
例:美郷町 EV=最大45万円PHV=25万円
※いずれも美郷町HP記載の金額から国のCEV補助金をマイナスして算出。
<岡山県:各市区町村にて実施>
例:岡山市 EV=上限15万円、FCV=上限50万円
<山口県:各市区町村にて実施>
例:周南市 FCV=上限50万円
<徳島県>
FCV=上限100万円
<愛媛県:各市区町村にて実施>
例:宇和島市 EV=一律10万円
<福岡県:各市区町村にて実施>
例:大宰府市 EV、FCV=10万円、PHV=5万円
<熊本県:各市区町村にて実施>
例:熊本市 EV、PHV、FCV=上限10万円
<大分県:各市区町村にて実施>
例:大分市 FCV=上限50万円
<宮崎県:各市区町村にて実施>
例:串間市 EV、PHV、FCV=上限30万円
<鹿児島県:各市区町村にて実施>
例:鹿児島市 EV=10万円、FCV=30万円
東京都が頭ひとつ抜き出ている
際立って条件が良いのは、やはり東京都。埼玉県も頑張っている。都の補助金は「ZEV補助金」と呼ばれており、EV(軽EV含む)、PHV、の購入に際し、本体費用に対して最大45万円が助成される。FCVでは最大110万円だ。
さらに再生エネルギー100%の電力メニューを契約すると60万円にアップ、さらに太陽光発電システムを導入すれば75万円までアップします。CEV補助金と都の補助金だけで併せて最大150万円もの助成(EV/PHVの場合)が受けられることになる。
さらに区が独自に設定している補助金もあり、それらを組み合わせることで助成金額はかなり大きくなる(このような“抱き合わせ”の補助金を設定している自治体はほかにも多く存在する)。
東京都は政府方針を前倒しして、「2030 Carbon Half」という施策を打ち出している。別記事でも紹介しているとおり、2025年以降に販売される新築分譲マンションや新規オフィスビル/大規模商業施設などに規模に応じた充電設備の設置を義務付けるなど、強力に脱炭素の施策を進めている。地代や家賃のことはさておき、EVやPHVのオーナーにとっては東京都内に住むという選択はありなのかもしれない。