文:黒石研仁/写真:黒石研仁、ホンダ、大成建設
▶▶▶写真はこちら|ホンダ・大成建設の「磁界結合方式無線給電道路システム」(画像9枚)
道路を走るだけでバッテリーを充電できる「走行中無線給電」を公道で実証
本田技術研究所(ホンダ)は2026年10月5日、大成建設および大成ロテックと共同で、走行中のEV(電気自動車)に非接触で給電できる「磁界結合方式無線給電道路システム」の基盤技術を開発したと発表した。2027年度以降には高速道路での実証実験も予定されており、EVの充電課題を解決する次世代インフラとして注目が集まっている。
走行中無線給電(DWPT)とは
走行中無線給電(DWPT)は、道路に埋設した給電ユニット(GA)から、走行する車両の受電ユニット(VA)へ非接触で電力を送る技術だ。道路側と車両側のコイルが磁界を介して電気をやり取りする「磁界結合方式」を採用している。
両コイルを同じ周波数で共振させることで、路面と車体に距離があっても、走行中に位置がずれても、効率よく電力を伝送できる。ホンダは2021年から開発に取り組み、GA1ユニット当たり最大150kW(瞬間のピーク出力)の電力伝送を目指している。

道路に敷設する給電ユニットのイメージ。電源からの直流電流を交流電流に変換するインバータを各GAに内蔵し、コイルと一体で埋設している点が特長だ。
3社の役割分担と共同研究の概要
3社の共同研究は2025年に始まった。大成建設が直流電源システム、ホンダが直流配電型GAシステムと受電ユニットを搭載した車両システム、大成ロテックが無線給電道路の施工方法をそれぞれ担当する。

各社の担当領域。
舗装構造の開発や耐久性試験、更新手法の開発は3社共同で進めている。大成建設グループの実験道路「T-FIELD/SATTE」では、大型商用車での公道実証を想定したシステムや舗装構造、施工・更新手法を検証し、有効性を確認したという。
ホンダが開発した基盤技術の3つの特長
第一の特長は、大型商用車の荷重に耐える強度である。ユニット内部の構造を最適化し、車両総重量20トンクラスの大型車が長期間走行しても耐えられる舗装構造を実現した。
第二の特長は、高効率で安定した給電を可能にする直流配電構造だ。インバータとコイルを走行中無線給電ユニットとして世界で初めて一体化し(2026年9月末時点、ホンダ調べ)、地上の直流電源システムと組み合わせることで、高応答かつ安定した大電力給電を実現した。
第三の特長は、施工性と更新性への配慮である。既存舗装への切削・埋設施工に対応し、配線の簡素化で部品点数と施工作業量を減らした。将来の舗装更新工事も見据えた構造で、既存道路の補修工事と同程度の時間・距離での敷設を目指している。

乗用車から大型トラックまで幅広い車両に対応した上で、施工性にも優れたシステムを開発した。
小型・低コスト化を支える銅条線コイル
受電ユニットには、帯状の「銅条線」を使ったサーキュラーコイルを採用した。巻太りはリッツ線比で約30%低減し(ホンダ試算)、製造コストの低減にもつながる。乗用車のサブフレームに収まるほど小型で、大型商用車では最大4ユニットを並列搭載することで、最大40トンクラスの車両にも対応できるという。
大型商用車が抱えるバッテリー問題の解決を目指して
大型トラックなどの電動化では、航続距離の確保と高い稼働率の維持を両立することが課題だ。走行中に給電できれば、充電のための停車や充電頻度を減らせるため、物流・輸送分野の課題解決に有効と期待される。ホンダも導入効果の高い物流・輸送分野での実用化を最初の目標に掲げている。

受電側(VAユニット)を標準化すれば、どのEVでも走行中にワイヤレス充電できるようになる。
道路に給電設備を整える以上、特定メーカーだけが使える仕組みでは普及しない。ホンダは通信規格などの国際標準化にも参加しており、規格に沿えば他社のEVも同じ道路から給電を受けられる。さらに、給電側の電源に太陽光や風力などの再生可能エネルギーを活用できれば、地域で生んだ電力を地域で使う地産地消にもつながり、2050年カーボンニュートラルの実現にも寄与する。
2027年度から高速道路で実証スタート
今後は、2026年末から大成建設グループの「T-FIELD/TAMURA」に試験走行路を構築する。実車を使った100万輪(49kN換算)の載荷走行試験で長期耐久性を評価するほか、走行中の給電性能や漏えい電磁界対策も検証する。その後、大型商用車向けに最大150kWの高出力での性能検証や、高速走行時の信頼性検証を進める。

試験路で長期耐久性評価や性能検証を行った後、実際の高速道路に敷設して実証実験を行う予定だ。
2027年度以降には、東日本高速道路(NEXCO東日本)が館山自動車道(千葉県)で実施する「館山プロジェクト」に3社で参画する。この公道での実証が、ワイヤレス給電技術の実用化に向けた大きな節目になる。
ホンダの取り組みは、「Japan Mobility Show Bizweek 2026」(10月13日〜16日、幕張メッセ)や「ITS World Congress 2026」(10月19日〜23日、韓国・江陵市)でも紹介される予定だ。道路インフラ事業者や行政、エネルギー企業など業界の枠を超えた共創が、走行中無線給電の社会実装を左右することになるだろう。
おすすめの関連記事
【関連記事】東京大学らの走行中給電
【関連記事】電動キックボードのワイヤレス給電も実証実験が行われている
【関連記事】産業用ドローンもワイヤレス充電化で無人化を目指す
【関連記事】約50万円、免許不要で乗れる超小型EV「ブルージェー」の試乗レビューはこちら(動画あり)






