究極の電動技術とエネルギーマネジメントの獲得
ヤマハがフォーミュラEに参戦する最大の目的は、電動パワートレーンにおける究極のエネルギーマネジメント技術を獲得することにある。フォーミュラEのレギュレーションでは、レース中に使用できるバッテリー容量が厳しく制限されている。レースを確実に完走し、かつ他車よりも速く走るためには、限られたエネルギーをコース上のどこで、どのように効率良く配分するかというエネルギーマネジメントの能力が直接的に勝敗を分ける。

2026年シーズンはベテランのルーカス・ディ・グラッシと若手有望株のゼイン・マローニという体制で挑む。
フォーミュラEでは搭載するバッテリーを全車共通のワンメイクと定められているため、容量や出力などバッテリー自体の性能でライバルに差をつけることはできない。あえて制限された条件下で戦うことにより、モーターやインバーター、ギアボックスといったハードウエアの効率化と、それらを最適に統合制御するソフトウエア技術など、純粋なエネルギーマネジメント技術の優劣が問われる。
ヤマハは、この極限の環境下で戦うことで電動領域のノウハウを蓄積し、自社の技術を最高レベルまで磨き上げることを狙いとしている。
全社的な技術フィードバックと開発スピードの向上
レースという過酷な環境で培われた技術は、サーキットの中だけで終わらせるものではない。ヤマハは、フォーミュラEで得られた知見をもって、電動技術を用いたすべての事業を底上げしようと画策している。
とくに、電動パワートレーンのエネルギーを最適化するソフトウエア制御技術は、二輪車をはじめとする市販の量産製品にも応用しやすいという特長がある。レースの現場で極限まで追求された高効率化や性能向上の技術を、将来的に市場へ投入されるヤマハ製品の最大の強みとして実装していく構想が描かれている。
こうした高効率な電動モビリティ技術の開発と量産化へのフィードバックは、ヤマハが企業として目指している2050年のカーボンニュートラル実現という高い目標を達成するための直接的な推進力となる。
年間を通じて世界各国の市街地コースやサーキットを転戦するレースの現場では、一般的な量産製品の開発とは比較にならないほどの圧倒的な開発スピードと、状況に応じた瞬時の判断力が要求される。

開発・実走ともに順調にプログラムをこなし、テストから好調な仕上がりを見せた。
フォーミュラEでは、実車を使用したテスト走行の機会がレギュレーションによって厳しく制限されているため、限られたデータから最適解を導き出すためのシミュレーション技術や、試験室内での開発精度を極限まで高めることが不可欠となる。ヤマハはフォーミュラEの実戦を通じて、こうした高精度かつ迅速な開発プロセスを組織に根付かせ、今後の量産車開発に活かすための強固な土台づくりとすることを、参戦の大きな価値として位置づけている。
