ヤマハ発動機(以下、ヤマハ)は、四輪モータースポーツにおける電動カテゴリーの最高峰「フォーミュラE」への参戦を通じ、新たな技術領域へ歩みを進めている。長年にわたって参戦しているMotoGPをはじめとして、世界のモータースポーツシーンで数々の輝かしい実績を残してきた同社が、四輪の純電動車レースという新たな領域へと踏み出した意義は深い。スマートモビリティの未来を担う技術開発とビジネス展開の視点から、ヤマハのフォーミュラE参戦について詳解する。

新たなビジネス展開と創立70周年を経ての挑戦

ヤマハがフォーミュラEを見据える視線の先には、次世代モビリティ市場における新たなビジネスモデルの構築がある。その将来的な目標のひとつが、トヨタ自動車をはじめとするモビリティ企業に向けた、電動パワートレーンのOEM供給ビジネスへのチャレンジである。

ヤマハはこれまでも自動車用エンジンの開発や供給の実績があり、近年は自動車用モーターの開発にも注力してきた。世界最高峰の電動レースであるフォーミュラEへの参戦は、電動技術力の高さを実証、そして世界に向けてアピールする最高の場となる。

実際にフォーミュラEへの参戦表明を通じた技術アピールにより、他社からの問い合わせが増加するなど、電動技術分野におけるヤマハの認知度向上のメリットが明確に生み出されている。

ヤマハ発動機は2025年に創設70周年を迎えた。その歴史を振り返れば、過去のF1参戦や現在も戦い続ける二輪車レースの最高峰MotoGP参戦など、モータースポーツへの果敢な挑戦はヤマハにとってかけがえのない重要な資産であり、ブランドのルーツそのものでもある。

70周年という大きな節目を越えた今、モビリティ業界全体を巻き込むエレクトリフィケーションという世の中の大きな変革の流れに対し、みずから新たな領域へと挑戦する姿勢を継続している。未知の電動四輪レースという環境でのチャレンジングな取り組みを、世界中のファンに楽しんでもらうことも、参戦の重要な理由として掲げられている。

日・英・独の協業によるワンチーム体制

このプロジェクトにおいて、ヤマハは強力なパートナー企業と提携し、それぞれの専門領域を活かした体制を構築している。

イギリスに本拠を置く老舗レーシングカー開発会社であるローラ・カーズは 、コンストラクターとしてフォーミュラEの規格に準拠したシャシや車体パッケージの設計から製造、供給を担当する。

一方、ドイツの企業であるABTは、フォーミュラEの創設メンバーとしての豊富な経験を活かし、実際のレース活動における最前線のチーム運営を担う。現場に帯同する30名以上のピットクルーの大半も、このABTのメンバーによって構成されている。

この体制のなかでヤマハは、車両の心臓部にあたるモーター、インバーター、ギアボックスといった電動パワートレーンの開発および供給を担当し、勝敗の鍵を握るソフトウエアによるエネルギーマネジメント領域も専門に担う。

このように、車体づくりのローラ、チーム運営のABT、中核となる電動駆動技術のヤマハという、日・英・独の3社がそれぞれの専門領域と強みを持ち寄り、ひとつのチームとして世界選手権の頂点を目指す強固な役割分担が成立している。

そして2026年、この強力なパートナーシップはついに結実し、フォーミュラE ラウンド13 上海E-PRIX R2(2026年7月5日)において待望の初優勝を飾った。この歴史的な勝利によってチームおよび社内の機運はかつてないほどの高まりを見せており、次世代モビリティビジネスへの挑戦は、ここからさらなる加速を始めようとしている。

画像: 中国・上海で行われた第13戦でルーカス・ディ・グラッシがトップチェッカーを受け、チームとして初優勝を飾った。 © Yamaha Motor Co., Ltd.

中国・上海で行われた第13戦でルーカス・ディ・グラッシがトップチェッカーを受け、チームとして初優勝を飾った。

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