海運業界の脱炭素化を目指した取り組み
海運業界では、国際海事機関(IMO)が温室効果ガス削減目標を定めたことを契機に、次世代燃料船への転換が急速に進んでいる。
出光興産は、こうした海運業界の脱炭素化の動きに応じて、従来の船舶燃料と比較して約20%のCO2排出量削減が見込めるバイオ混合燃料の実用化に向け、北海道で内航船舶を対象とした運航試験を2023年から2024年にかけて実施。バイオ混合燃料を使用しても従来の船舶燃料使用時と同様の設備・運転条件で安定運航できることを確認していた。

兼松油槽/小倉油槽所にてバイオ混合燃料をバージ船(はしけ)に積み込む様子。
今回供給が開始されたバイオ混合燃料は、主に2つの原料(下記)をブレンドして生成される。
・FAME(脂肪酸メチルエステル):使用済み食用油をメタノールと反応させて生成される、軽油同等の性状を持つバイオディーゼル燃料
・重油:従来の船舶燃料
供給にあたっては、兼松グループの兼松油槽が持つ小倉油槽所の陸上タンクと海上出荷設備が活用される。兼松が調達したFAMEと出光興産が供給する重油を兼松油槽がブレンドし、品質確認の上で外航船への燃料供給に向けた海上出荷を行う。

各社の主な役割と燃料供給の流れ。
バイオ混合燃料で使用するFAMEはEU基準(EN規格14214)を満たしており、燃料の製造および供給に関してISCC認証を取得している。これにより、海運会社に対してProof of Sustainability(PoS)を発行できるという。
出光興産は今後、バイオ混合燃料の需要動向を踏まえ、供給量の増加にも対応可能な同社の海上出荷設備も活用した供給体制への移行を検討している。さらに、CO2を原料として製造される燃料「e-メタノール」の国内供給体制を構築することも目指している。
e-メタノール:CO2と再生可能エネルギー由来の水素を合成して得られる次世代燃料
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