歩く速度で移動する「低速自動走行モビリティ」という新たな価値
「iino」は5km/hで走行する、新しいコンセプトのモビリティ。移動速度や操作性、航続距離などの効率や利便性を追求するのではなく、人間本来のニュートラルな移動感覚、つまり歩行速度に着目した乗り物(「低速自動走行モビリティ」)だ。歩行者とも違和感なく共存することが可能なので、さまざまなシーンでの活躍が期待されている。
2020年の会社設立以来、神戸・三宮中央通り地下通路や大阪・御堂筋にて公道走行実証実験を実施。また、横浜山下公園や東京国際映画祭といった施設やイベントと連携し、街そのものを楽しむ企画を開催するなど、自動走行モビリティの本格導入に向けてさまざまな検証を重ねてきた。

神戸三宮、横浜ほか、全国の地方自治体やまちづくり事業者とともに実証実験を重ねてきた。(写真は横浜山下公園)
「iino」の基本仕様は2タイプ。都市部の歩行者空間、観光地、ホテルリゾートなどでの利用を想定した「タイプS」(全長2470mm×全幅1110mm)と、観光地、ホテルリゾート、レストランの配膳やイベントなどでの活用も視野に入れた「タイプR」(全長3600mm×全幅1590mm)が用意される。走行する場所や目的に応じて形態も含めたカスタマイズが可能だ。

走行中も自由に乗り降りできる「iino」。写真はiino type-S1300と呼ばれる最大8人の乗車が可能なモデル。全長2950mm×全幅1300mm×全高1050mm。
2025年3月19日、日本で初めての本格導入。まずは2.5km/hで走行
そんな「iino」がいよいよ社会実装への第一歩を踏み出した。場所は、羽田空港の第2ターミナル。同施設はこれまで本館と北側サテライト間は専用バスによる移動に頼っていたが、このほど通路の増設・増築工事が完了。ターミナルから直接航空機に搭乗できる搭乗口5カ所が新設されて利便性が大幅に高められた。併せて、「iino」の導入によっ利便性だけでなく新たな移動体験も提供する。
今回導入される「iino」は、羽田空港での活用に考慮した「羽田モデル」。ベースとなったのはタイプSで、運行スピードは2.5km/h。乗車定員は最大8人まで可能だが、今回はあえて最大6人に設定される。だれでも安全に乗り降りができるように床面の高さを可能な限り抑え、また緊急時にはセンサーを踏むことで、0.7km/hまで減速する。

今回導入される「羽田モデル」はタイプSをベースに4人分の座席と2人分の立ち乗りスペースを設定した6人乗りのカスタマイズモデル。運行速度は2.5km/hに設定。
「動く家具」をコンセプトにデザインされた車体は外装に暖かみを感じさせる木材を採用しており、また乗車時の目線の高さも歩行者とほぼ同じ高さに設定して周囲とのコミュニケーションもとりやすく設定されているのが特徴だ。
・走行場所とルート:羽田空港 第2ターミナル 2階 搭乗口52番付近~47番まで
・走行時間:8:00〜20:00
・利用方法:予約不要、無料
ゲキダンイイノでは、導入後も内装デザインや走行ルート、移動速度などについて利用者や関係者からのフィードバックを収集、これをもとにさらなる改良を施して、空港ならではの移動体験を追及していくとのこと。今後、地方自治体やまちづくり事業者と協力しながら、街と人とをつなぐモビリティサービスの提供に向けた取り組みを進めていくとしている。