英国に本拠を置く世界的な自動車調査会社JATOダイナミクスが、2024年6月13日に2023年の車名別世界新車販売順位を発表、テスラのモデルYが世界首位となった。EVが世界販売台数のトップになるのは初めて。同調査は、世界53カ国のJATOネットワークによる統計データの集計と98カ国の公式・非公式および推計から順位を発表している。(タイトル写真はテスラモデルY)

自動車の世界販売は依然好調、2台に1台がSUV

テスラは年始より“モデルYは2023年は全世界で120万台を販売し、世界でもっとも売れている自動車である”と喧伝していたが、今回JATOの調査でもそれが裏付けられた。2023年の世界販売台数は122万3000台となり22年度比で64%も増えたことになる。同調査でEVが販売首位に立つのは初めてである。

続く2位はトヨタRAV4(107万5000台:22年度比+5%)、3位はホンダCR-V(84万6000台:同18%)。ほかに上位25位までの顔触れはSUVが目立ち、実際に2023年の世界販売台数(7832万台)のほぼ半分をSUVが占める。

北米、カナダそして中国に加え、近年は欧州やインド、東南アジア諸国などでもSUV人気が高まっており、JATOはこの傾向は今後も続くと分析している。自動車メーカー各社のSUVへの依存度も、これからますます高まっていくだろう。

【2023年度 乗用車世界販売:上位25車】( )内は対前年比
1位:テスラ モデルY 122.3万台(+64%)
2位:トヨタ RAV4/ワイルドランダー 107.5万台(+5%)
3位:ホンダ CR-V/ブリーズ 84.6万台(+18%)
4位:トヨタ カローラ/レビンセダン 80.3万台(−19%)
5位:トヨタ カローラクロス/フロントランダー 71.5万台(+35%)
6位:トヨタ カムリ 65万台(−2%)
7位:フォード F-150 62.3万台(+18%)
8位:トヨタ ハイラックス 60.5万台(−4%)
9位:日産 セントラ/シルフィ 53.4万台(−1%)
10位:テスラ モデル3 50.8万台(+5%)
11位:ホンダ シビック/インテグラセダン 47.8万台(+22%)
12位:BYD 秦/Qin 47.3万台(+43%)
13位:日産 エクストレイル/ローグ 46.1万台(+80%)
14位:ホンダ アコード/インスパイア 45.1万台(−7%)
15位:ヒョンデ ツーソンEWB 42.3万台(+25%)
16位:シボレー シルバラード1500 41.2万台(+9%)
17位:ヒョンデ エラントラ/アヴァンテ 39.9万台(+5%)
18位:ラム1500 37.4万台(−6%)
19位:BYD 宋Plus 36.9万台(+9%)
20位:フォルクスワーゲン ポロHB 36.4万台(+56%)
21位:フォルクスワーゲン ジェッタ 36.1万台(+29%)
22位:マツダ CX-5 35.6万台(−2%)
23位:BYD アット3/ユアンプラス 35.5万台(+119%)
24位:スズキ スイフト 35.4万台(+6%)
25位:ホンダ ヴェゼル/HR-V/XR-V 33.6万台(−27%)

画像: グローバル市場でカローラと並び圧倒的な強さを誇るトヨタRAV4(中国名:ワイルドランナー)。

グローバル市場でカローラと並び圧倒的な強さを誇るトヨタRAV4(中国名:ワイルドランナー)。

画像: 日本では今夏にFCEVモデルとして復活するCR-V(広汽ホンダ版は「ブリーズ」)。

日本では今夏にFCEVモデルとして復活するCR-V(広汽ホンダ版は「ブリーズ」)。

テスラは先進国限定ブランドと言えそう

特筆すべきは、テスラが達成した数字は主に北米、欧州、そして今や世界最大の自動車市場に成長した中国を中心に達成されたものであるところ。多くの自動車メーカーが新興市場も含めた“世界市場”で販売台数を稼いでいるのに対して、テスラは先進国市場と中国市場でビジネスを成立させている。

一方、新興国市場は先進国のそれを上回るスピードで成長しており、すでに2023年には1750万台以上の新車が販売された。テスラはそれらの地域では高額車であり、充電インフラの問題もあって現状ではまだ購入を検討する人は少ない。

テスラがEV事業でさらなる成長を期待しているならば、これら新興国市場の開拓はマストになるだろう。いわゆる“モデル2”の開発は中断されてしまったようだが、モデルYや3よりも安価なEVの発売が(充電インフラ整備など含め)新興国市場攻略の鍵となることは間違いない。

画像: テスラは昨年バージョンアップした「モデル3」も10位にランクイン。同社の今後は新興国マーケットでいかに存在感を高めることができるかにかかっている。

テスラは昨年バージョンアップした「モデル3」も10位にランクイン。同社の今後は新興国マーケットでいかに存在感を高めることができるかにかかっている。

もっとも、このブルーオーシャン市場を巡る覇権争いは今後さらに熾烈なものになることも必至だ。いまのところトヨタを始め日本メーカーが依然として強いものの、BYDを始め中国メーカーが急速に存在感を高めている。

これに新興国市場対策に本腰を入れ始めた欧州メーカーも加わって、しばらくのあいだ混沌とした状況が続きそうだ。果たして来年のJATOの集計結果はどうなるのか。その順位は2023年とは大きく変わるかもしれない。

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