いすゞ自動車は2024年3月27日からタイの首都バンコクで開催される「BANGKOK INTERNATIONAL MOTOR SHOW 45th」(バンコク国際モーターショー)で、1トン積みピックアップトラック「D-MAX」のバッテリーEV(BEV)バージョンを一般向けに世界初公開する。同社はすでにEVバス、小型EVトラックを発売しているが、ピックアップトラックのEVは初めて。2025年に欧州で発売を開始し、タイや豪州でも順次展開していく。

フルタイム4WDのEVピックアップを参考出品

日本ではトラックやバスのメーカーとしてなじみ深いいすゞ自動車だが、海外ではピックアップトラック「D-MAX」が絶大な支持を得ており、100カ国以上の国と地域で販売されるグローバル戦略車だ。現行型D-MAXは3代目にあたり、2019年10月に発表され、2023年10月に大幅改良を受けている。

生産はタイの泰国いすゞ工場(IMCT)で行われており、累計生産台数は前身モデルやOEMも加えると累計500万台にも及ぶ(2023年9月末時点)。そんなベストセラーカーにいよいよEVモデルが追加される。

画像: 市販前提で “参考出品”される「D-MAX EV」。ディーゼルエンジン搭載車の悪路走破性・堅牢性や優れた牽引性能をEVで実現する。

市販前提で “参考出品”される「D-MAX EV」。ディーゼルエンジン搭載車の悪路走破性・堅牢性や優れた牽引性能をEVで実現する。

画像: こちらは昨秋に大幅改良を受けたディーゼルエンジン搭載の「D-MAX」。日本では発売されていないが世界のベストセラーピックアップだ。

こちらは昨秋に大幅改良を受けたディーゼルエンジン搭載の「D-MAX」。日本では発売されていないが世界のベストセラーピックアップだ。

ピックアップトラックに求められるのは、まずなによりもタフな基本性能だ。EV化されても求められる基本性能は変わらない。いすゞはディーゼルエンジン搭載車に勝るとも劣らない走行性能と堅牢性、信頼性に加え、パワートレーンをすべて新開発して期待に応える。

前40kW/108Nm、後90kW/217Nmの最高出力/最大トルクを発揮するフルタイム4WDの駆動システムは66.9kWhの容量をもつリチウムイオンバッテリーによって駆動され、高い悪路走破性およびEV特有のリニアな加速感と、低騒音・低振動を両立させた。

また、既存ラインナップのディーゼルエンジンモデルと同等の使い方ができるよう、堅牢なフレームとボディの設計により高い牽引能力(3.5t)を確保している。

発売は2025年中に開始する予定で、まずはノルウェーをはじめとする欧州の一部から開始。続いて、英国や豪州、タイなど他のエリアについても各国、地域のクルマの使われ方やインフラの整備状況などを踏まえて展開していく。なお、同車に関する価格や詳細な情報は、バンコク国際モーターショーでの公開後に順次発表される。

【主要諸元 いすゞ D-MAX BEV(参考出品車)】
駆動方式:フルタイム4WD
バッテリー種類:リチウムイオン
バッテリー容量:66.9kWh
モーター最高出力:システム総出力130kW(前40kW、後90kW)
モーター最大トルク:システム合計325Nm(前108Nm、後217Nm)
最高速:130km/h以上
最大積載量:1000kg
最大牽引能力:3.5t

カーボンニュートラル対応車で最先端を走るいすゞ

現在、乗用車の生産を行っていないので一般的な認知はいまひとつかも知れないが、いすゞはカーボンニュートラル(CN)の実現に向け、業界の最先端を走る自動車メーカーでもある。

2023年春には小型トラックの「エルフEV」を発売し、2024年1月には車両総重量3.5t未満の「エルフミオEV」も追加。また2023年10月には、フルフラットフロア路線バスの「エルガEV」も発表し2024年中の販売開始を予定している。

また2023年12月からホンダとの共同研究として燃料電池を搭載した大型トラック「ギガFUEL CELL」による公道での実証実験走行を行っている(2024年9月まで)。この実験で得られたデータをもとにさらなる開発を進めて2027年に市場導入を目指している。そして2030年にはCN対応車のフルラインアップを完成させる計画だ。

画像: 2024年1月に追加された「エルフ ミオEV」。

2024年1月に追加された「エルフ ミオEV」。

画像: 2024年中の発売を予定しているフルフラットフロアの大型路線バス「エルガEV」。

2024年中の発売を予定しているフルフラットフロアの大型路線バス「エルガEV」。

画像: 燃料電池を搭載した大型トラック「ギガFUEL CELL」による公道実証実験をホンダと共同で実施中。2027年中の市場導入を目指す。

燃料電池を搭載した大型トラック「ギガFUEL CELL」による公道実証実験をホンダと共同で実施中。2027年中の市場導入を目指す。

さらにCN化を加速させるため、2026年6月には藤沢工場内に新設される「電動開発実験棟」の稼働も開始される。商用電動車に最適なシステムやコンポーネントを開発するための実験評価設備を導入し、EVやFCEVの開発スピードを上げる。いすゞが自らシステムやコンポーネントを評価、開発し、より高い次元の車両開発へとつなげていくという。

画像: 神奈川県藤沢市にある工場内に「電動開発実験棟」を新設。商用電動車に最適なシステムやコンポーネントの開発スピードを向上する実験・評価設備を導入予定。

神奈川県藤沢市にある工場内に「電動開発実験棟」を新設。商用電動車に最適なシステムやコンポーネントの開発スピードを向上する実験・評価設備を導入予定。

画像: 昨年のジャパンモビリティショーではバッテリー交換式「EVision Cycle Concept」も披露された。

昨年のジャパンモビリティショーではバッテリー交換式「EVision Cycle Concept」も披露された。

乗用EVの普及が足踏み状態にあると喧伝される昨今だが、それでもモビリティの電動化は着実に進んで日々の生活にも浸透しつつある。商用車・バス・トラックからピックアップまで、CN車両のフルラインナップ化を強力に推進するいすゞの動向には今後も注目しておくべきだろう。

This article is a sponsored article by
''.