キックボード専用ナビ機能で交通違反を減らすのが狙い
2023年7月に施行された改正道路交通法により、「特定小型原付」という新たなカテゴリーが誕生した。これに合わせ、電動マイクロモビリティのシェアリングサービスLUUPも、この「特定小型原付」に則った電動キックボードを提供し始めた。
しかし、警察庁によると、改正法施行後の特定小型原付による交通違反行為の中では「通行区分違反」が最も多く、Luupもその事態を認識し、一部の悪質な利用者に対する対策を検討してきたのだそうだ。
また、自転車についても交通ルールを無視した走行が問題化しており、警視庁の2023年資料によれば、自転車違反の取締件数は年々増加傾向にあり、これを受けて反則金を課す「青切符」による取締りを導入する方針が発表されている。
そこで、LUUPではこの問題を解決するために、自転車に適したルート検索機能を活用し、出発地から目的地までの推奨ルートをアプリ内で表示する機能を開発した。このナビ機能を利用することで、交通事故や交通違反の減少につながることが期待される。
ちなみにナビ機能は、
①ルートを表示させるためにはスタートとゴールという二つの地点を結ぶ必要がある。
②走行時に安全にナビ機能を使用するため、車両にスマートフォンを固定できる必要がある。
という2点を抑えていることが求められるが、LUUPでは利用する際、①ライド前に必ず目的地ポートを予約する必要があり、②提供されている全車両にスマホホルダーが装着されているという特徴があるため、この2点にうまく対応することができた。
ユーザー目線だと“なぜ交通違反をしてしまうのか”
一方、電動キックボードで歩道を走行する悪質な利用者がいる背景の一つとして、ユーザー目線で考えてみると、自動車の交通量が多い車道での走行に危険を感じ、違反であることを自覚しつつもその危険を回避するために歩道に乗り上げている可能性がある。
実際に、Luupが利用者向けに実施したアンケートでは、回答者のうち83%が「自転車や電動キックボードで車道を走る際に「走りづらい」と感じた経験がある」と回答し、その理由としては「路肩に路上駐車されている」(68%・最も多い)や「車やバイクの走行量が多い」(43%)や「自転車レーンがない」(36%)といった幹線道路等の自動車の交通量が多い車道に当てはまりやすい特徴に関連する回答が多く、自転車や電動キックボードの利用者が特に自動車の交通量が多い車道において走りづらさを感じていることを示唆する結果となっている。
他方で、利用者から「目的地に向かって走行していると、無意識に大通りを走行してしまうことが多い」、「自身のマップアプリでルートを表示させると、大通りをメインに走行するルートが提案されることが多い」といった声があったことから、LUUP利用時に利用者が自転車や電動キックボードに適したルートを選択できていないという課題も存在しているようだ。
特定小型原付とほぼ同じ交通ルールの自転車用ルート表示を活用
電動キックボードを含む特定小型原付向けのルートは、新たな車両区分が創設されて一年未満でもあることから、特定のナビゲーションサービス等は未だ定着しておらず、シェアリングサービスのアプリでの実装はLuupが日本初となる。
特定小型原付は、多くの点で自転車と共通の交通ルールを採用しており、主に異なるのは以下の2点である。
(1) 年齢制限の有無(特定小型原付:有、自転車:無)
(2)歩道走行時の速度制限の有無(特定小型原付:有、自転車:無)
こうしたことから、今回は暫定的にナビタイムジャパンが提供する自転車向けルート検索API「NAVITIME API」を活用することで実装している。
このナビ機能は2024年3月最終週より、ライド時に推奨ルートが表示されるようになる予定で、現在地に対してマップ画面が追従し、ルートの確認を容易にする機能や、夜間でもマップ画面を見やすくするダークモードに対応した機能の開発も予定されている。
また、試験導入ということもあり、まずは都内のライドのみ、iOS端末のみを対象に提供されるが、将来的には、今回の試験提供を経て得られたフィードバックを参考に、特定小型原付に最適なルートの検証等に取り組む予定だそうだ。