キアは日本未発売ながらEV戦線の最先端を走る
現在は日本を除く世界中で販売されている「キア」。かつてはマツダやフォードと協業関係にあり、1989年には韓国メーカーとして初めて東京モーターショーにも出展した。現在はヒョンデ傘下となり、発売されるモデルはそのコンポーネンツの多くをヒョンデブランド車と共用している。
ヒョンデはすでに日本に再上陸を果たしているが、キア(と現代グループのジェネシス:Genesis)は現在、日本での正規販売はない。名前は聞いたことがあってもクルマは見たことがない、という日本では知る人ぞ知るブランドになっている。
「EV6」は世界が認めた次世代EVのトップランナー
そんなキアがEVシフトを急加速させている。その端緒となったのが、同社初のEV専用車として誕生した「EV6」だ。次世代EVプラットフォーム(E-GMP)をはじめ、構造的にはヒョンデのアイオニック5と多くを共用するものの、そのスペック、デザイン、パッケージは大きく異なる。
トップグレードの「GT AWD」は、全長4694×全幅1890×全高1544mm、ホイールベースは2900mm。搭載バッテリー容量は77.4kWh。最高出力は430kW(576hp)、最大トルク739Nmというハイスペックを誇る。
800Vでマネジメントされており、350kW急速充電器ならわずか18分でSOC10-80%の充電が可能だ。0-100km/h加速は3.4秒、最高速は260km/hという俊足を誇る。
北米で展開するグレード構成は、RWDのベーシックモデル「Light RWD」から上述の「GT AWD」まで8モデル。また、全グレードが最大3.6kwを給電可能なV2L機能(外部給電機能)を搭載しており、120V/240Vのいずれにも対応している。
2021年春に本国で発表されて以来、欧州カー・オブ・ザ・イヤー2022の受賞を皮切りに、各国で開催される賞典を次々に受賞しており、その優れた性能とパッケージに賞賛が集まっている。
最新モデル「EV9」はフラッグシップSUV
2023年12月時点の最新モデルが、3列シート・ラージクラスSUVの「EV9」。本国を始め、欧州、北米、中国などでも発売予定だ。6人乗りと7人乗りがラインナップされ、全長5014×全幅1980×全高1781mm、ホイールベース3100mmという堂々たる体躯を誇る。
駆動方式はRWDまたはAWDで、搭載バッテリー容量はRWDモデルが76.1kWh、ロングレンジモデル(RWDまたはAWD)が99.8kWh。RWDの駆動モーターは最高出力160kW(215hp:AWDロングレンジ車は150kW<201hp>)と最大トルク350Nmを発生し、AWDのGTグレードは283kW(380hp)/600Nmとケタ違いにパワフルな性能が与えられている。もちろん、EV6と同じく外部給電機能も搭載している。
未来を変える画期的なシステムも開発
去る2023年11月12日に韓国ソウル市で開催された「Kia EV Day」では、今後市場投入するEV、3モデルのコンセプトカーを発表した。すでに発売されている2モデルに加え、コンパクトクラスSUVの「EV3」、4ドアクーペの「EV4」、ミッドサイズSUVの「EV5」が並んだ景色はなかなか壮観だ。
さらに11月29日には、ヒョンデと共同開発したまったく新しい駆動システム「ユニ・ホイール(ユニバーサル・ホイール)ドライブ・システム」も発表した。
いわゆるインホイールモーターと異なり、モーターは車体側に残しつつ、ホイールの内部に減速ギアほか駆動部品を配置する技術であり、車両の空間利用効率が飛躍的に高まる。
実車に搭載されるまでに、まだしばらく時間はかかりそうだが、革新的かつ汎用性の高いシステムであることは間違いない。実現すれば、「クルマのカタチ」が抜本的に変わる可能性もある。
日本上陸のうわさはまだ聞こえてこないが、すでに欧米を中心にEVメーカーとしての地歩を固めているキア。その急速な変化はこれからさらに加速していきそうだ。