エンジン車の燃費はこれまで慣れ親しんできたこともありわかりやすい。日本では燃料1Lあたり何km走れるかを表示するのが通例だ。EVの場合はどのように表示されて、それはどう理解すればよいのかを説明しよう。(タイトル写真は三菱eKクロス EVのメーター)

電費の表示にはふたつの方法がある

ガソリンや軽油を燃料にするエンジン車に使われる指標のひとつが「燃費」。日本では「km/L」という単位が使われていて、1Lの燃料でどれだけの距離を走れるかを表している。対して、燃料を使わないEVの場合は「電費」という言葉が使われている。そして電費の考え方にはふたとおりある。

「km/kWh」:数字が大きいほど電費が良い

まずは電気1kWhでどれだけの距離(km)を走れるかを示すもの。単位は「km/kWh」だ。この数字が大きければ大きいほど電費性能は良いと判断できる。車内ディスプレイに表示される平均電費は、こちらの単位を用いていることが多い。

「Wh/km」:数字が小さいほど電費が良い

こちらは1kmあたりを走るのに必要な電力量を表している。この数字が小さければ小さいほど電費は優れていると判断できる。EV車のカタログに載っている交流電力量消費率は、ほとんどが「Wh/km(WLTCモード)」で表示されている。

またカタログには「一充電走行距離(WLTCモード)」が併記されており、単位は「km」を使う。航続距離と呼ばれるもので、1回の満充電で走行可能な距離のことだ。イメージしやすいので、最近ではこれがEVの性能指標となっている。

画像: 「三菱eKクロス EV P」。20kWhのバッテリーを搭載して一充電航続距離(WLTC)180kmがカタログデータ。

「三菱eKクロス EV P」。20kWhのバッテリーを搭載して一充電航続距離(WLTC)180kmがカタログデータ。

「Wh/km」や「一充電走行距離」の算定基礎となっているのがWLTCモード。WLTCというのは燃費や電費を測定する際に用いられる国際的な計測モードで、市街地(WLTC-L)、郊外(WLTC-M)、高速道路(WLTC-H)の3つのモードの平均的な使用配分で構成される。

いわゆるカタログ電費であり、かつてのJC08モードよりは実情に即してはいるが、ドライバーの運転の癖や運行する条件(天候、地形、渋滞の有無ほか)でかなり変動する。とくにエアコンの使用頻度、気温の影響は結構大きくEVならではの特性と言える。

EVの電費が悪化する主な要因(参考)

■急減速が多い:急な減速は回生ブレーキが働く時間が短くなり、エネルギーの回収量が減ってしまう。
■エアコンの使用: EVは車内の暖房/冷房のためにバッテリーに蓄えた電気を使うので、電費は悪化する。エアコンはオートにせず、まめにオンオフを切り替えると電費の悪化を最小限に抑えられる。
■極端な低温:リチウムイオン電池は、低温(や高温)では効率が下がる。本当に厳しい条件下では、電力供給効率が半分近くまで低下してしまうこともある。

こうした諸条件が加わって実際の電費(実電費)は、どうしてもカタログ表示を下回ることがほとんど。近年の平均電費は「Wh/km」で約170Wh/km 。「km/kWh」では約6〜7km/kWhと言われている。

電気はガソリンや軽油のように可視化できないうえ、「Wh/km」「km/kWh」という単位が混在しているので、戸惑うこともしばしば。とは言え「Wh/km」が一般的な電費の解釈となりつつあるのは間違いない。

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