スマートな電動モビリティの先駆けといえば、セグウェイである。元祖立ち乗り型モビリティは今どうなっているのだろうか。

セグウェイの歴史

セグウェイは正式名称をセグウェイ PTといい、元祖立ち乗り型電動モビリティとして、2001年12月に発表された。発表以前に開発車両を見ていた、ビル・ゲイツ、ジェフ・ベゾス、スティーブ・ジョブズといったIT界の著名人たちが「革命的製品だ」とこぞって絶賛していたため、マスコミの報道が過熱し、正体不明な乗り物に対する期待感が先行していたのである。

画像: 独特の操作感に慣れると、移動を楽しめる乗り物だった。

独特の操作感に慣れると、移動を楽しめる乗り物だった。

発売開始時の価格は5000ドル、日本円にしておよそ60万円と高価格であったことで、販売は低迷し、3年間で約6000台にとどまってしまった。その結果、業績も悪化し、2009年にはイギリスの個人投資家に、2015年にはXiaomi傘下の輸送ロボット企業「Ninebot(ナインボット)」に買収された。

そして2020年7月15日にはセグウェイ PTの生産が停止された。 20年の累計販売台数は約14万台であり、個人が日常生活で近距離の移動に用いる用途では普及せず、空港の警備や観光ツアーなどといった業務向けの利用にとどまった。

現在では、より安価で安全に利用できる近距離のスマートな移動手段として、電動アシスト自転車・電動キックボードが急速に台頭したことで、セグウェイの時代が終わったと見ることもできるだろう。

セグウェイが売れなかった理由

顧客設定を失敗した

セグウェイの商品コンセプトは「環境に優しい近距離の移動手段」であったが、最高速は20km/hで、走行可能距離はモデルによって20kmと40kmと短く、価格も60万円~100万円と高額だったため、より安価な電動自転車に顧客が流れてしまった。結果的に、警察や工場内の移動手段など、業務用途での需要でしか購入されず、ビジネスとして破綻してしまったのである。

法規制

最初に販売されたアメリカでは、州ごとに規制が異なるものの多くの州で公道走行が可能であった一方で、日本を含めた他の国では、公道での利用が禁止されていた。そのため、大衆向けに広く普及することができなかったのだ。

ネガティブなイメージの浸透

2003年、アメリカのブッシュ大統領がセグウェイを利用しようとして、転倒しそうになった映像がTVで放映された。また、ソフトウェアの不具合も発生し、転倒事故や衝突事故が多発し、ソフトウェア不具合問題に関しては、2006年にリコール処置が行われたとはいえ、危険なイメージが浸透してしまった。

安価な代替手段の登場

2010年代に登場した電動キックボードに代表される、電動モビリティ群は10万円以下で購入できるものが多く、片手で持ち運べる重さ・サイズ感で気軽に利用できることもあり、爆発的にヒットした。また、こうしたモビリティは法改正などで公道走行が可能となり、シェアリングサービスの登場により、所有せずに使いたい時だけ利用するスタイルが普及したことで人気を博していった。

現在のセグウェイ

現在はセグウェイ PTから電動キックボードにメイン製品が移行し、電動キックボードを専門に扱うメーカーとなっている。それに伴い、日本でセグウェイを扱っていたセグウェイジャパンでも、電動キックボードを販売しているが、一方でセグウェイ PTの整備と認定中古車販売、セグウェイ PTを用いたツアーも引き続き行なっている。

画像: セグウェイの主力製品は電動キックボードに移行した。

セグウェイの主力製品は電動キックボードに移行した。

まとめ

セグウェイの看板製品「セグウェイ PT」は、様々な要因により、現在では残念ながら生産を終了してしまっている。しかし、セグウェイ PTの反省を踏まえ、電動キックボードの普及が進んだことを考えれば、今日の便利な電動モビリティ社会の実現のパイオニアとしてセグウェイが果たした役割は大きいと言えるだろう。

また、セグウェイジャパンはマイクロモビリティ推進協議会にも加盟しており、日本における電動キックボードの普及にも貢献しているのである。セグウェイが思い描いた、電動モビリティによる新しい社会の実現という夢は、現在の電動キックボードに受け継がれているのである。

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