「経営計画チャレンジV 2021-2025」で掲げられた目標
NEXCO中日本が掲げる「経営計画チャレンジV(ファイブ)2021-2025」では、4つの経営方針が提示されている。それが「安全性向上に向けた不断の取組みの深化」、「高速道路の機能強化と広くお客さまに利用される高速道路空間への進化」、「デジタル化や脱炭素化などの環境変化に適応した新たな価値創造への挑戦」、「お客さまをはじめとするステークホルダーの期待に応え続けるための経営基盤の強化」というものだ。
その「デジタル化や脱炭素化などの環境変化に適応した新たな価値創造への挑戦」の中で、具体的なデジタル化の推進として掲げられているものが「i-MOVEMENT」だ。その内容としては、「次世代技術を活用した革新的な高速道路マネジメント」で、そこには「交通運用改革」、「料金・サービス改革」、「メンテナンス改革」、「保全マネジメント改革」、「地域活性改革」という6つのジャンルが設定されている。
ユーザーに直接関係するサービスは?
「i-MOVEMENT」には6つのジャンルの改革が掲げられているが、その多くが道路という施設を保全するための新技術に関するものだ。しかし、その中には、高速道路を利用する我々ユーザーに関わるものも存在する。
ピックアップしてみると「交通運用改革」の「道路予測の高度化」や、「料金・サービス改革」にある「旅行快適化支援アプリによるサービス向上」、「メンテナンス改革」にある「維持作業(清掃および植栽作業)の機械化による省力化」などは、高速道路利用者の目に触れる部分となるだろう。
実際にどのようなことが行われているかといえば「道路予測の高度化」としては、2019年6月よりAIを活用した渋滞予測技術の開発に着手。また、2020年10月からはETC2.0プローブデータを活用することで所要時間情報の精度を向上させている。
また、「旅行快適化支援アプリによるサービス向上」としては、2021年2月よりハイウェイラジオ情報をスマートフォンアプリで提供する「みちラジ」のサービスを開始した。AMラジオ(1620kHz)による渋滞・事故・通行止めなどの交通情報が、より幅広い手段で利用できるようになっている。
「維持作業(清掃および植栽作業)の機械化による省力化」としては2021年7月より、清掃ロボットを一部SAで導入。現在は限られたSAのみでの導入だが、そのうちにロボットによる清掃や植栽作業は珍しくない風景になるはずだ。
路車間協調システムの実証実験を小山PA近辺で実施予定
「経営計画チャレンジV(ファイブ)2021-2025」には、「i-MOVEMENT」以外にも次世代技術の導入が目標として掲げられている。
そのひとつが「自動運転を見据えた技術開発の推進」だ。実際に新東名の静岡県内の一部区間では、レベル4の自動運転の実現に向けた、路車間協調システムに関する実証実験が予定されている。
2023年度には新東名の建設中区間の一部(小山PA/小山スマートIC:仮称)の中の約4?の区間での実証実験が予定されている。また、2024年度は新東名の駿河湾沼津?浜松間の約100?において自動運転用レーンを設定し、深夜時間帯での自動運転トラック運行実現を目指している。
自動運転は遠い未来の話ではなく、高速道路では意外に早く実現することになるのだろう。
●著者プロフィール
鈴木 ケンイチ(すずき けんいち)1966年生まれ。國學院大学経済学部卒業後、雑誌編集者を経て独立。自動車専門誌を中心に一般誌やインターネット媒体などで執筆活動を行う。特にインタビューを得意とし、ユーザーやショップ・スタッフ、開発者などへの取材を数多く経験。モータースポーツは自身が楽しむ“遊び”として、ナンバー付きや耐久など草レースを中心に積極的に参加。