コスモ石油は2025年5月から国産SAFの旅客便への供給を開始した。日本航空(JAL)、全日本空輸(ANA)、DHL、フィンエアー、デルタ航空、スターラックス、エバー航空への供給が予定されている。

SAFはCO2排出量を8割削減できる航空燃料

近年では様々な業界で脱炭素化の取り組みが行われており、航空業界でも国連の国際民間航空機関(ICAO)において、2024年以降はCO2排出量を2019年比で15%削減するという数値目標が採択された。

航空業界ではエネルギー密度の観点で電動化が難しいため、CO2排出量削減の手段として「SAF(Sustainable Aviation Fuelの略)」と呼ばれる、バイオジェット燃料を含む持続可能な航空燃料の導入が必要である。

SAFは原料と製造方法別に8種類が規定されており、いずれも航空機や給油設備の変更なしで利用できるほか、製造から使用までのライフサイクル全体で約60~80%のCO2排出量削減効果が得られるというメリットがある。

ASTM D7566で規定されている合成燃料の種類

分類製造プロセス(略称)原料混合比率の上限値
Annex A1FT石炭、天然ガス、バイオマス50%
Annex A2HEFA植物油、動物性脂肪、使用済み食用油50%
Annex A3SIP砂糖生産に使用されるバイオマス10%
Annex A4FT-SKA石炭、天然ガス、バイオマス50%
Annex A5ATJ-SPKバイオマス由来のエタノール、イソブタノール、イソブテン50%
Annex A6CHJ植物油、動物性脂肪、使用済み食用油50%
Annex A7HC-HEFA-SPK藻類10%
Annex A8ATJ-SKAバイオマス由来のC2-C5アルコール--

ちなみに、製造されたばかりの純度100%の代替燃料は「ニートSAF」と呼ばれているが、現時点では種類別に決められた上限値に従って石油由来のジェット燃料と混合して使用することが義務付けられている。

画像: コスモ石油のSAFは、使用済みの食用油をリサイクルしたものに化石燃料を混合して製造されるタイプ。

コスモ石油のSAFは、使用済みの食用油をリサイクルしたものに化石燃料を混合して製造されるタイプ。

現状では世界のジェット燃料生産量のうちわずか0.3%(2024年、IATA推計値)しか生産されていないものの、日本政府は2030年時点のSAF使用量として、「本邦エアラインによる燃料使用量の10%をSAFに置き換える」との目標を設定しており、量産化が急務とされている。

国産SAFの供給拡大に向けた取り組みが進む

今回供給が開始されたSAFは、原料となる使用済み食用油を回収し、工場で精製したものと化石燃料を混合してつくるタイプ。

家庭や店舗などで発生する廃食用油を回収し、それを原料とした燃料で航空機が飛ぶ世界を実現する共同プロジェクト「Fry to Fly Project」の一環で取り組みが行われてきた。

画像: 「Fry to Fly Project」は国内資源の廃食用油を原料とするSAFを用いて、航空機が飛ぶ世界を実現するプロジェクト。

「Fry to Fly Project」は国内資源の廃食用油を原料とするSAFを用いて、航空機が飛ぶ世界を実現するプロジェクト。

燃料の製造は、コスモ石油、日揮ホールディングス、レボインターナショナルの3社により設立された合同会社SAFFAIRE SKY ENERGYが担い、大阪府堺市にある設備で年間3万キロリットル生産する計画だ。

同施設では2025年4月から国産SAFの製造を開始し、2025年5月1日に関西国際空港で旅客機への供給を開始したという。

なおSAF供給の第1号は日本航空(JAL)のJL891便(関西発上海/浦東行)であったそうで、日本航空(JAL)のほかにも順次、全日本空輸(ANA)、DHL、フィンエアー、デルタ航空、スターラックス、エバー航空にも供給される予定となっている。

画像: 大阪府堺市にあるSAF製造設備。

大阪府堺市にあるSAF製造設備。

日本政府の掲げる「2030年時点で航空燃料使用量の10%をSAFに置き換える」という目標に向けて、国産SAFの供給が順調に拡大していくかどうか、今後の展開にも要注目だ。

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