2025年4月16日(現地時間)から始まったニューヨーク国際オートショーで、スバルは全電動SUV「トレイルシーカー(TRAILSEEKER)」を世界初公開した。同時発表された改良型ソルテラの上位車種という位置づけで、ともに現在改修中の矢島工場で2026年2月前後から生産を開始する。スバルは2026年末までにソルテラ、トレイルシーカーを含めトヨタと共同開発した全電動SUVを4車種ラインアップする計画だ。

ブランド史上2番目の全電動SUV「トレイルシーカー」はソルテラの上位車種に

スバル車らしさを前面に出した改良型「ソルテラEV(ソルテラの北米市場での名称)」とともに世界初公開された全電動SUVの「トレイルシーカー」。北米での発売は2026年初頭になるとのこと。それゆえに、今回アナウンスされた情報はまだ限定的であり、詳細は発売間近に公表されるという。

ボディサイズは「(ソルテラ比で)6インチ以上長く、約1インチ高く、貨物スペースを増やすために後部専用スペースが追加されている」と紹介されたが、具体的な数値は公表されていない。最低地上高のみ8.3インチ(約211mm)と明らかにされたが、これはソルテラEVと同じだ。単純計算すると、トレイルシーカーのボディサイズは、全長はおよそ4842mm、全幅はソルテラ(1860mm)と同等、全高はおよそ1675mmと推察する。

画像: 地上最低高はソルテラと同じ約211mm。パワートレーンもソルテラと共通だが、やや大きくなるボディにあわせてピークパワーは37ps上回る。

地上最低高はソルテラと同じ約211mm。パワートレーンもソルテラと共通だが、やや大きくなるボディにあわせてピークパワーは37ps上回る。

駆動方式は全車AWD。前後のモーターによる最高出力はおよそ375ps、牽引能力は3500ポンド(約1590kg)と発表された。スバルのSUVらしく、スノー/ダートモードとディープスノー/マッドモードを備えたX-MODEデュアルモードシステム、グリップコントロール、ダウンヒルアシストコントロールも採用される。また加速度センサーによる、加減速時や旋回中のトルクベクタリング機構も実現している。ちなみに0→60マイル/h(約96km/h)加速は4.4秒。スバル WRXを1秒以上も上回り、スバル最速車でもある。

バッテリー容量は74.7kWh、航続距離は260マイル(約418km)以上。新型ソルテラと同じくバッテリープレコンディショニングシステムを搭載し、気温の影響を最小限に抑えて安定した急速充電時性能を実現する。

画像: 巨大な14インチのディスプレイを除けば基本的なインテリア装備は新型ソルテラEVに準じている。

巨大な14インチのディスプレイを除けば基本的なインテリア装備は新型ソルテラEVに準じている。

コクピットも新型ソルテラに準じたもの。タッチスクリーンはスバル車で最大サイズとなる14インチに拡大されており、Apple CarPlayとAndroid Autoに対応するとともに、さまざまなエンターテインメントを提供する。前席には2つのワイヤレス15Wスマートフォン充電器、後席には、2つの高速USB-C充電ポートが装備されている。

トレイルシーカーはソルテラの上位車という位置づけであり、寸法やモーターの出力こそ異なるが基本的なコンポーネンツはほぼ共用していると考えてよいだろう。

一部仕様を変更してトヨタブランドからも発売

スバルは2026年末までにトヨタとの共同開発によるEVを4車種ラインナップ(ソルテラ含む)することをすでに公表している。生産も互いの工場を活用して相互供給する体制も構築する。下はそのイメージ図だが、4車種のなかで中央右にある「SUBARU矢島工場生産」と記されているのがトレイルシーカーだ。

注目すべきは、「矢島工場で生産したSUVはトヨタ自動車にも供給」するとされているところ。つまり、トレイルシーカーはトヨタからも専用の意匠が採用されて発売される可能性が高い。こちらはbZ4Xの上位車種という位置づけになるだろう。

画像: 2024年5月に更新されたスバルの「ビジネスアップデート」より。2026年末までにトヨタとの共同開発による全電動SUVを4車種揃える。

2024年5月に更新されたスバルの「ビジネスアップデート」より。2026年末までにトヨタとの共同開発による全電動SUVを4車種揃える。

さらに、トレイルシーカーは欧州市場でもスバルブランド、トヨタブランドともに発売される可能性がある。欧州トヨタは、2025年3月12日に開催された年次製品戦略イベントにおいて2026年末までに発売するEVラインナップに言及。2025年内に3車種(改良型bZ4X、アーバンクルーザー、C-HR+)、2026年にはさらに3車種のトヨタブランドによる新型EVを投入することを明らかにしている。下の画像はその時に公開されたものだが、下段のシルエットになった3車種のうち、左側の車種に注目していただきたい。そのシルエットにトレイルシーカーとの共通点が多々あることに気が付かれるだろう。

画像: トヨタは2026年までに欧州で6車種の新型EVをラインナップ。上段左から改良型bZ4X、アーバンクルーザー、C-HR+。下段は左から「トレイルシーカー(トヨタ版)」、「新型ハイラックスEV」、そして「ランドクルーザーSe」であると予想する。

トヨタは2026年までに欧州で6車種の新型EVをラインナップ。上段左から改良型bZ4X、アーバンクルーザー、C-HR+。下段は左から「トレイルシーカー(トヨタ版)」、「新型ハイラックスEV」、そして「ランドクルーザーSe」であると予想する。

残る2車種はいずれもトヨタの北米工場生産車になる可能性

残るは上記ビジネスアップデートに記された2車である。1台は「トヨタ自動車 北米工場生産」とあるので、トレイルシーカーよりも大きなSUVであると想像がつく。そこでトヨタ側からなにか情報が出ていないか遡ってみた。

トヨタは、2023年6月1日に同社初の米国生産全電動SUVの拠点としてケンタッキー工場(TMMK:Toyota Motor Manufacturing, Kentucky,Inc.)への追加投資を発表している。そこには「3列シートSUV」とも明記されている。ケンタッキー工場は、RAV4 HEV、カムリ HEV、レクサス ES(HEV含む)の生産工場だ。計画発表時には2025年の稼働開始を目指していたが、最新情報によれば2026年初頭にずれこむ可能性も指摘されている。

画像: TMMK全景。RAV4、カムリ、レクサス ESなどミドルサイズのTNGA-Kプラットフォーム採用車を生産している。

TMMK全景。RAV4、カムリ、レクサス ESなどミドルサイズのTNGA-Kプラットフォーム採用車を生産している。

また、2024年4月26日付でインディアナ工場(TMMI:Toyota Motor Manufacturing,Indiana,inc.)への追加投資も発表されている。こちらでは同じく3列シートの全電動SUVを2026年から生産すると記されており、上述のケンタッキー工場生産車とは異なる車種であると補足されている。同工場ではグランドハイランダー、ハイランダー、シエナ、TXなど、ケンタッキー工場で生産される車種よりもやや大きい車種を生産している。

画像: TMMI全景。TNGA-Kプラットフォーム採用車の中でも大型の車種を中心に生産する。

TMMI全景。TNGA-Kプラットフォーム採用車の中でも大型の車種を中心に生産する。

ここからは完全な予想となるが、ケンタッキー工場では2025年後半にフルモデルチェンジするRAV4をベースにした「新型の完全電動3列シートSUV」が、インディアナ工場ではすでにコンセプトカーが公開されている「ランドクルーザーSe」が生産される可能性が高い。このどちらか、あるいは両方ともにスバルブランド車が存在する可能性は十分にある。予想が当たれば、北米専売車のアセントを超えるスバル史上最大サイズのクルマが誕生することになる。

画像: 2026年にはトヨタ・インディアナ工場において「ランドクルーザーSe」の生産が始まる見込み。日米だけでなく欧州でも販売される。スバル版も存在する可能性大。

2026年にはトヨタ・インディアナ工場において「ランドクルーザーSe」の生産が始まる見込み。日米だけでなく欧州でも販売される。スバル版も存在する可能性大。

いずれにせよ答えはあと1年半後に出る。86/BRZの共同開発からスタートしたスバルとトヨタの関係は、電動化の時代を迎えてさらに接近していることが伺われる。bZ4X/ソルテラ、ストロングハイブリッド車、そして双方の生産拠点を活用した供給体制の構築。そして、2028年末からはスバルが独自開発した新型EV 4車種の生産が「大泉新工場(ガソリンハイブリッド車との混流生産)」も始まり、都合、スバルには8車種のEVラインナップが揃うことになる。

先が読みづらい昨今、さまざまな思惑が絡み合ってすべてが計画通りに進む保証はないものの、後手と言われていた日本の自動車メーカーから続々とEVが誕生する時代がやってきているのは間違いない。続報に期待大だ。

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